旧統一教会の被害者救済を図るための新たな法律「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」が臨時国会会期末の10日、参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。紀藤正樹弁護士が「未来は守れるが過去は救えない」と指摘する通り、十分とは言えない内容になっています。今回はその中身と、論点となった「3つの配慮義務」「6つの禁止行為」「マインドコントロールの扱い」などについて詳しく見ていきます。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2022年12月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
異例の土曜国会で旧統一教会被害者救済法成立
旧統一教会の問題を受けた被害者救済を図るための新たな法律は、臨時国会会期末の10日、参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。6日の衆院本会議で審議入りし、わずか5日間でのスピード成立です。
与党や立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などが賛成、日本共産党とれいわ新選組は反対の立場を取りました。
この法案の条文「第一章総則」に、「第一条」として、この法律の目的が書かれています。
この法律は、法人等(法人または法人でない社団もしくは財団で代表者もしくは管理人の定めがあるものをいう。以下同じ)による不当な寄付の勧誘を禁止するとともに、当該勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を定めることにより、消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)とあいまって、法人等からの寄付の勧誘を受ける者の保護を図ることを目的とする。
なにはともあれ、旧統一教会問題が世間に広く認知された最初の国会で成立したことは、今後の被害者救済に向けての第一歩であることはまちがいありません。
大事なことは、今臨時国会で法案が成立したこと。
臨時国会開会当初は、岸田政権はこの救済法成立には消極的でした。それが世論の風もあり、こんな短期間の急ピッチ成立までこぎつけたことは異例ともいえます。
宗教は人を救うべきもので、家庭を崩壊させ、苦しめるものであってはならない……この法案に、このような思いが込められているのかどうか、この法案ができたことがゴールではなく、今後とも法案を現実被害を救済する形でアップデートし続けなければならないと思います。
すでに被害を受けている信者とその家族を救えない?
実際、この法案には運営上問題を多く含んだものではあることは否めません。
新たな被害を生み出すことの抑止力にはなり得ることは評価しますが、現在進行系の被害者をほとんど救えない……紀藤正樹弁護士はこう語っています。
「未来は守れるが過去は救えない」。法案成立後も検討会を設けて、引き続き法案を、より実効性のあるものにしていくことが大事だとしています。
いずれにしても、法案内容の良し悪しはともかく、必要と思えば早急に成立させることができるということなのですね。本当に成立させたいという法案は、時間を言い訳にしないことを学びました。
安保法制のときに、すでに学んではいるのですがね…。