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ユニクロ“4割賃上げ”報道も「大企業だけ…」と広がる怨嗟。賃上げ分が価格に転嫁され“格差のさらなる拡大”を危惧する声も

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、国内のグループ従業員の年収を最大で約4割上げると発表したことが、大きな波紋を呼んでいるようだ。

報道によると、対象となるのは同社で働く国内の正社員8400人。新入社員の初任給は、現在の25万5,000円から30万円に引き上げ、入社1~2年目で就任する新人店長は月収29万円を39万円とするほか、その他の従業員も数%から約40%の範囲でアップさせるという。

新賃金は3月に改定されるといい、人件費は総額で15%程度増える見込み。同社としては、より高い海外の賃金水準に近づけることで、人材確保を強化したい狙いがあるようだ。

人件費増大の見込みも株価に大きな変化なし

数十年ぶりの上げ幅という物価上昇が相変わらず続き、家計を圧迫するなかで、岸田首相が年頭の記者会見でも「何としても実現しなければなりません」と訴えていた企業の賃上げ。

また経団連の十倉雅和会長も年明けの記者会見で、会員企業に対して持続的な賃上げを要請する発言をするなか、ロート製薬が人事・報酬制度見直しで社員1人あたりの年収を平均7%引き上げることを発表したほか、サントリーHDもベースアップを含めて月収ベースで6%の賃上げを検討すると報じられるなど、各社で賃上げの話がボチボチと浮上していたというのが最近の状況。

そんな流れのなかでの今回のファストリの発表となったわけだが、なんといっても最大で約4割というド派手なアップ率が相当なインパクトということもあって、さっそく松野博一官房長官が「企業の積極的な賃上げ方針を前向きに評価したい」と反応するなど、いわゆる“賃上げムード”がこれを機に一気に高まることを期待する声が。

いっぽうファストリといえば、強制労働の可能性が指摘される新疆ウイグル自治区の綿を製品に使用している問題、さらにウクライナ侵攻後もロシア事業を継続したことなどと、事あることに批判される機会が多いわけだが、今回の件に関しては好意的に受け止めるといった向きがSNS上でも多い模様。

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また今回の発表を受けて注目されたファストリの株価だが、さほど大きな動きは見られず。人件費の増大は避けられない今回のような話は、ともすれば苦々しいものと捉えられかねないものだが、この株価の動きを見るに、投資家サイドからも一定の支持を得られているようだ。

非正規は賃上げの恩恵に預かれるのか?

このように、ここに来てグッと高まってきた感もある“賃上げムード”なのだが、その反面で名前が挙がっているのが先述のロート製薬やサントリー、さらに今回のユニクロということで、「大企業ばかり…」といった声もあがっているも実際のところ。

この手の話は、まずは大企業にその先鞭を切ってもらい、その後に中小企業が追随するといった流れが想定されるとはいえ、果たして経営体力のある大企業はともかくとして、中小がそれに続くことができるのかという点で、懐疑的な見方は結構多いようだ。

さらに今回のファストリの件で言えば、賃上げの対象があくまで正社員のみで、アルバイトなどの非正規は対象となっていない点も気になるところ。

2022年8月末時点のデータでは、国内のユニクロに在籍する正社員の数は12,698人なのに対し、準社員及びアルバイト社員は25,261人。さらにジーユーは、正社員5,060人に対し、11,633人の非正規が存在するとのこと。同じ店舗で共に働いている従業員のなかでも、今回の賃上げの対象となるのは、どうやら3分の1程度の人員に留まるというのだ。

このように大企業とそれ以外の企業、あるいは大企業のなかでも正社員と非正規との間で、給与などの待遇の格差がさらに広がることの危惧もあるなか、その正社員の賃上げ分に関して、商品の価格に少なからず転嫁されるのではないかという見方も広がる。

特に最近のユニクロは、以前は同店のウリでもあったリーズナブルな商品が少なくなり、相対的に価格が上昇しているとの見方も、利用者の一部からはあがっている。今後そういった傾向がより強まれば、賃上げの恩恵に預かれない層にとっては、ユニクロでさえ“高値の花”となる日が訪れるかもしれないといったところなのだ。

労働者にとって喜ばしいことであるはずの、最近の大企業を中心とした賃上げ話。しかしながら、日本ではここ30年以上に渡って平均年収が横ばいといった状況が続いているだけあって、その手の話に対してすっかり懐疑的、あるいは悲観的な向きも多いというのも、致し方ないところだろう。

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