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ロシア軍のキーウ総攻撃はあるか?ドゥーギンの論文から読み解くゼレンスキー政権“転覆”シナリオと終戦後の世界=高島康司

キーウ攻撃とロシアの計画

もし戦略を変えたロシア軍のキーウの総攻撃が成功し、これによってゼレンスキー政権が崩壊した場合、どのような展開になるかは予想できる。

マクレガー大佐や、ウクライナ戦争の実態を報告しているスコット・リッター元少佐などの情報から類推すると、おそらくロシアは次の3つのことを確実に行うだろう。

1)親ロシア派の大統領が就任
ウクライナには東部のロシア語話者を支持基盤にした野党があったが、ゼレンスキー政権は野党を禁止し、ゼレンスキーの与党の一党独裁体制になっている。親ロシア派の野党政治家はロシアに亡命している。その一人は、「野党プラットフォーム・生活党」の元党首、ビクトル・メドベチュク議員だ。ロシアはこの人物をとりあえず暫定的な大統領にすることができる。

2)ロシア軍の監視下で国民投票を実施
ロシア軍の監視の下、ウクライナで国民投票を実施して、メドベチェクを正式な大統領に就任させる。

3)新政権との和平協定
その後ロシアは、この新しく樹立した政権との間に和平協定を締結する。そして、ウクライナ戦争を正式に終結させる。もちろん親ロ派政権なので、ロシアの要求はすべて認められる。それは、ルガンスク、ドネツク、サボリージャ、ケルソンの4州のロシア併合だ。

もちろん、このような方向に進むかどうかは分からない。反対にロシア軍は、欧米の支援を受けたウクライナ軍の頑強な抵抗に遭遇し、膠着状態のまま戦争は長期に続くかもしれない。欧米とロシアの消耗戦となり、どちらかの国力が限界に来るまで戦争には決着がつかない可能性もある。

だが、キーウ総攻撃によってゼレンスキー政権を崩壊させるシナリオは存在する可能性はある。

ロシアの最強硬派が主張するシナリオ

しかし、こうしたマクレガーらの軍事専門家が主張するロシア軍のキーウ総攻撃のシナリオはどこまで現実性があるのだろうか?この問いに答えるヒントのようなものがあればよいと思う。

ところでいまロシアでは、ロシア軍のウクライナ進攻への反対運動はほとんど見られなくなった。反対運動の主な担い手は、モスクワなどの大都市圏に居住する高学歴で比較的に若い専門職が中心だった。この層はロシア軍のウクライナ進攻が始まる前からロシア国内のリベラル勢力の中核であり、ロシア大統領選の野党候補であったナヴァルニーを支持して、プーチンに反対する運動を展開していた。ロシア国内の親欧米の層である。

しかしいま、ロシア軍のウクライナ進攻後、ロシア国内では愛国主義が高まっており、それにかき消されるようにロシア国内のリベラル勢力は勢いを失っている。反戦運動や反プーチンの抗議運動などはほとんど見られなくなっている。したがって、その政治的な影響力はほとんどないに等しい。

一方、ウクライナ戦争後、ロシア国内で影響力が大きくなっているのは、ロシアの保守強硬派である。この支持者は比較的に年配の層に多く、ロシア軍や警察、そして「FSB」などの治安機関に多くの支持者がいるとされている。「ドゥーマ」と呼ばれるロシア下院でも一大勢力になっている。プーチン政権のウクライナ進攻は手緩いとして、戦術核の使用も含めたもっと積極的な攻撃戦略に切り替えるべきだと主張している。この勢力の政治的な影響力は大きいので、プーチンも無視できない存在となっている。

この保守強硬派を率いる代表的な人物こそ、元モスクワ大学法学部教授で「新ユーラシア主義」を唱える思想家のアレクサンドル・ドゥーギンだ。昨年の8月、彼の娘で保守系メディアのキャスターだったダリア・ドュギナが車に仕掛けられた爆弾によって死亡したことは記憶に新しい。「新ユーラシア主義」と呼ばれるドゥーギンの保守的な思想と世界観の政治的な影響力は、すこぶる大きい。プーチン政権下のロシア軍の高官にも信奉者は多い。プーチンもドゥーギンの思想を完全に無視することはできないようだ。

Next: メインシナリオは、ロシア勝利とゼレンスキー政権の崩壊?

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