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日本では報道されないウクライナの大苦戦と損失。次の段階はNATO“有志連合軍”の介入か=高島康司

ウクライナの戦況の実態についてお伝えする。日本ではまったく報道されていないが、今週ある重要なニュースがあった。NATOの前事務総長のアンデルス・ラスムセンがNATO軍の有志連合の派兵を主張したのだ。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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伝えられていないウクライナの戦況

日本を含めた西側の主要メディアでは、ウクライナ軍の反転攻勢が成功し、ロシアに占領されていた領土が次々と奪還されているいう印象を与える報道が多い。

ウクライナ国防省のマリャル次官は12日、これまでにドネツク州西部のマカリウカやザポリージャ州東部のノボダリウカなど7つの集落を奪還し、解放した領土は90平方キロメートルに上るとSNSで明らかにした。

また、ドネツク州の拠点で先月、ロシア側が掌握を主張したバフムトの周辺でもウクライナ軍の部隊が前進を続け、一部で領土を奪還したとしていて、ゼレンスキー大統領は12日、「われわれの兵士は成果をあげている」と自信を示した。

一方、ロシアは、ウクライナ軍の反転攻勢の成功を否定している。13日、プーチン大統領は、モスクワのクレムリンでロシア軍に従軍する記者を集めた会合を開き、このなかで、プーチンは、ウクライナの反転攻勢が今月4日から始まったとしたうえで「敵は成功せず、多大な死傷者を出している。われわれの損失は、ウクライナ軍の10分の1ほどだ」と述べ、ロシア軍が撃退していると強調した。

また「ウクライナ軍は160両以上の戦車や、360台以上の装甲車を失った。これは外国から供与された軍装備品の25%、おそらく30%に相当する」と述べ、ウクライナ軍や欧米から供与された兵器に「深刻な損失」が出ていると主張した。

このように、西側とウクライナ、そしてロシアではまったく異なる情報が報道されているので、本当のところ実際はなにが起こっているのかかなり分かりにくい状況になっている。

しかし、現場にいるパトリック・ランカスターのような独立系のジャーナリストの情報を含め、日本では報道されていない情報を丹念に調べると実際の状況がはっきりと見えてくる。

ウクライナはロシアの防衛線を突破できていない

まず、ウクライナ軍は南部サボリージャ州東部の7つの集落を奪還したのは事実である。これは現地にいるジャーナリストや、ウクライナ軍の戦闘部隊が撮影してテレグラムのチャンネルにアップロードした画像やビデオ、またロシア軍の兵士による同様のビデオなどでも確認できる。

日本を含め欧米の報道では、今回奪還した集落そのものは戦略的な拠点ではないものの、ウクライナ軍はこれを足掛かりにサボリージャ州のロシアが占領している交通の要衝、「トクマク」を奪還し、その後、ドネツク州の「マウリポリ」まで進撃して、アゾフ海に至る広大な地域を奪還することが狙いではないかとしている。

主要メディアは、今回の7つの集落の奪還は、計画実現の第一歩になるという楽観的な印象を流している。

しかし、ウクライナ軍が奪還した7つの集落は、ロシア軍が「セキュリティゾーン」と呼ぶエリアにあり、ロシア軍の防衛線の内側にある地域ではないことは分かる。「セキュリティゾーン」とは、ロシア軍の防衛線の外側にあり、ウクライナ、ロシアのどちらの側の支配にも明確にはないグレーゾーンである。その時々の戦況によって、ウクライナが支配したりロシアが支配している。ロシア軍はこの「セキュリティゾーン」を、防衛線の手前にある緩衝地帯として認識しているようだ。

ウクライナ軍が占領したと主張する7つの集落は、すべてこの「セキュリティゾーン」にある。以下のBBCの記事に掲載されていた地図を拡大した。確認してほしい。

※参考:Ukraine offensive: What will it take for military push to succeed? – BBC News(2023年6月13日配信)

ウクライナ軍が奪還した集落の位置 出典:BBC News

ウクライナ軍が奪還した集落の位置 出典:BBC News

この地図では、赤がロシア軍の占領地、赤の斜線がロシア軍が部分的に占領している地域、そしてグレーがウクライナ軍が奪還した地域に分かれている。赤の斜線とグレーの地域をロシア軍は「セキュリティゾーン」と呼び、強固な防衛線で守られた赤い地域の占領地域とは分けて考えているようだ。

ちなみにロシア軍の占領地域は、数百キロもある防衛線で頑強に防御されている。昨年の12月にニューヨークタイムス紙は、この防衛線を詳しく示した図を掲載した。

※参考:Russia Has Built Vast Defenses Across Ukraine. Will They Hold? – The New York Times(2022年12月14日配信)

この記事にある防衛線の図を拡大して掲載した。確認してほしい。

ロシア軍の防衛線 出典:The New York Times

ロシア軍の防衛線 出典:The New York Times

このようにロシア軍の支配地域は、非常に強固な防衛線で守られている。先に示したウクライナ軍が奪還したと主張する7つの集落は、明らかにロシア軍の防衛線の外側に位置している。ということは、いまのとことウクライナ軍は、ロシア軍の防衛線を突破できていないことははっきりしているようだ。

このような現状を見ると、これからウクライナ軍が防衛線を突破してロシア軍の占領地域の奥深くまで進攻し、内陸の「トクマク」を奪還するというのは大変に困難なように見える。これを実現するためにはロシア軍の防衛線を突破しなければならないが、それはあまりに大きな損失をウクライナ軍に与える。

すでにウクライナ軍は防衛線への攻撃を激化しているだろうが、かなりの損失が出ていると思われる。その意味ではプーチンの述べたことのほうが、現実を反映していると思う。

「敵は成功せず、多大な死傷者を出している。われわれの損失は、ウクライナ軍の10分の1ほどだ」

Next: 続々と報道されるウクライナ軍の損失……次の段階はNATOの介入?

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