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2030年、雇用の6割が「AI」に奪われる…消える職業・残る職業は?解決策として急浮上するベーシックインカムとその導入時期=高島康司

社会の維持にはベーシックインカム

こうした状況でも社会を維持するためには、労働による社会参加というモデルを根本的に改め、国民であれば政府が生存と生活を保証システムを導入しなければならない。つまり、ベーシックインカムである。

すでに労働による社会参加のモデルが成り立ちにくくなっていることは先進国でも比較的に広く認識されており、例えば2020年、欧州委員会は「EU全域で無条件のベーシックインカムを開始する」という欧州イニシアチブを打ち出している。「欧州の未来に関する会議」でも、ベーシックインカムの導入が欧州市民にとって重要な課題であることが示された。

また、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ローマ法王のフランシスコなどのオピニオンリーダーも皆、ベーシックインカムの支持を表明している。

ベーシックインカムはまた、特に若者の間で幅広い支持を得ている。ベーシックインカムは民間と公的セクターの両方に強力な支持者を得ており、欧米のいくつかの国では今後数年間、選挙の主要な争点になるほど注目されている。

AIの登場による食えない人々の増大は、政府に選択の余地を与えないはずだ。この危機的状況を見越して、近年、多くの国がこの問題に取り組んできた。政府の目的は、本当の革命につながりかねない民衆の反乱を回避することであり、このためには、国民の生活と生存を政府が保証するベーシックインカム以上の解決策はあり得ないと見られている。

デジタルクーポンとしてのベーシックインカム

しかし、ベーシックインカムにはどの国でも反対者が多い。その最大の理由は財源の確保である。特に政府債務がGDPの240%を越える日本では、全国民に一定の給付を無条件に保証するベーシックインカムのような制度が成り立つとは考えられないとする意見だ。これと同様の意見は、すでにベーシックインカムを地方自治体レベルで実験的に導入した経験のあるカナダやスイスのような国々でも、比較的に多い反対意見だ。

しかし、AIの導入による仕事の喪失と食えない人口の増大は、待ったなしの状態になりつつある。将来、ベーシックインカム制の導入の必要性は高まるばかりだ。そこで、いま注目されつつあるのは、デジタルクーポンでベーシックインカムを給付するというアイデアだ。これがどういうことか説明しよう。

まず、重要となるのは、政府財政や金融システムとベーシックインカムのクーポンを完全に分離して、ベーシックインカムとして給付したクーポンの影響が財政や金融に一切ないような状態にすることである。その上で、ベーシックインカム部分には「MMT(近代貨幣理論)」を適用して運用する。

すでに周知だろうが、「MMT(近代貨幣理論)」とは中央銀行は通貨の発行権を持っているのだから、政府の財政は税収には依存する必要はないとする学説である。政府は通貨を発行することで、必要な財政支出を賄うことができる。したがって政府は、国債を発行して税収では足りない部分を調達する必要性はなくなる。これは一見すると荒唐無稽な理論にも見えるが、衆議院でも超党派の勉強会が実施されるなど、将来の導入が真剣に検討されている理論だ。

いわば、デジタルクーポンで給付されるベーシックインカムだけにこの「MMT」を提供して、必要な支出を行うということである。しかし、デジタルクーポンが「MMT」では運用されていない従来の政府財政や、金融システムに一切影響を与えることがないように、ベーシックインカムのデジタルクーポンは預金もできなければ投資にも使うことはできない。また、現金やその他の金券との交換もできないようになっている。

さらに、デジタルクーポンには使用期限がある。給付されてから1カ月に以内に使わないと、価値が目減りするか、または価値が消滅するように設定されている。また、他者への譲渡もできない。

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