不動産部門で起きていること
また、不動産部門で起きていることも深刻だ。中古住宅販売件数は気が滅入るほど低い水準に落ち込んでおり、先月のアメリカの新築住宅販売件数は5.6%減少した。
一般的な住宅ローン金利が今年最高水準に達したため、米国の新築住宅販売件数は10月に減少した。「米住宅都市開発省」と「国勢調査局」の共同報告によると、10月の新築住宅販売件数は季節調整済み年率67.9万件と、9月の71.9万件から5.6%減少した。
新築住宅の価格も下落している。「国勢調査局」が発表したデータによると、10月に販売された新築一戸建て住宅の中央価格は9月より3.1%下落し、2021年8月以来最低の40万9300ドルとなった。3ヶ月移動平均は昨年12月のピークから12%近く下落している。
これらは契約価格であり、住宅ローン金利の買い取りや無料アップグレードなどのインセンティブにかかる費用は含まれていない。
さらに、商業用不動産の危機は激化の一途をたどっている。不動産大手の「トレップ」が数日前に発表した新しい数字では、延滞に分類される商業不動産担保証券(CMBS)に生成されたローンの額は、10月までの10ヶ月間で49.4%増加し、279億1000万ドルに達した。これは、「トレップ」が追跡している6,019億8,000万ドルのローンの5.07%に相当する。一方、昨年末時点の延滞件数は、6,161億5,000万ドル(当時)の3.03%であった。
延滞件数がこれほど驚異的なペースで増加している主な理由は、オフィスビルにあることが判明した。延滞増加の原動力となったのはオフィス部門で、10月までの10ヶ月間で延滞件数は261%増加した。全CMBSオフィスローンの5.91%にあたる199件、95.9億ドルのローンが、10月末時点で30日以上支払いが遅れている。昨年末時点では、115件、残高26.5億ドル、オフィスローンの1.63%が延滞していた。
国内主要市場の大半でオフィスの稼働率が低下しているため、このセクターの見通しが改善する見込みはない。これは、オフィスを利用するテナントの需要が大幅に後退しているためだ。
不動産業界が苦境に陥ると、たいていは金融危機がすぐそこまで来ていると主張する専門家も多くなっている。構造は異なるが、現在の状況は2008年の金融危機に近くなっているのではないかという指摘も急に目立つようになっている。
来年はどうなるのか?レイ・ダリオの予測
このように、すでにアメリカの不況入りを暗示させる予兆が増えている。では、不況も含めて2024年はどうなるのだろうか?
いま、大変に注目されている予測がある。世界最大のへッジファンド、「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者で伝説的な投資家のレイ・ダリオの予測である。
第747回のメルマガで紹介したように、レイ・ダリオは500年の長期的な歴史変動サイクルの分析によって、2008年の金融危機など数々の変動をこれまで予想し、的中させてきた。そうしたダリオが今年の6月26日に書いた記事が、いま改めて注目されている。ダリオは、米国債の増刷が誘発する経済の悪化を予測するとともに、それを背景とした米国内の内戦に近い状況も予測している。