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この値上げラッシュでも「まだデフレ」と言う政府…なぜ私たちの認識と大きくズレるのか?=斎藤満

2024年に入ってからも物価上昇が私たちの生活に重くのしかかっています。それでも政府は、物価高対策を政策の柱としながら、基本的にはまだ「デフレ脱却への正念場」と言っています。まだデフレが終わっていないとの認識です。この認識の違いと、税金・社会保険料負担増が国民をさらに苦しめます。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

【関連】30年ぶり賃上げがもたらす最悪の格差社会。恩恵のない弱者と年金生活者は物価上昇で火の車=斎藤満

※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年1月11日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

インフレ対応に戸惑う日本経済

日本経済は2回の石油ショックとバブル絶頂期以来のインフレを経験しています。長年インフレのなかった時期が続いたこともあって、インフレ対応に戸惑いが見えます。しかもこの間コロナ禍、その後の急回復もあって経済の基調もわかりにくくなっています。

そんな中、政府日銀は物価高が続く中でも日本経済は個人消費が賃上げの実現で緩やかな拡大を続け、経済をけん引するとみています。

しかし、IMF(国際通貨基金)の予想では日本は23年の2.0%成長のあと、24年は1.0%成長に減速を予想しています。実際には両年ともにこの予想を下回り、24年前半はゼロないしマイナス成長に陥るリスクさえあります。物価高の裏で個人消費が政府日銀の認識とは異なって落ち込んできているためです。

総務省が直近で公表した11月の家計消費も、実質では前月比1.0%減、前年比2.9%減となりました。

政府日銀の認識と異なる消費の実態

まず政府日銀が賃金上昇の中で堅調と評価している個人消費の実態が異なります。

昨年7-9月期のGDPは実質で前年比1.5%成長となっていますが、その中でGDPベースの個人消費はマイナスゼロにとどまっています。しかも、消費はこの1年では昨年1-3月期以外すべて前期比マイナスとなっています。

確かに、コロナ規制が解除され、昨年5月にはコロナが5類に分類されるようになってから人の流れが高まったのは事実です。観光・旅行の需要が高まり、交通・宿泊費の増加が目立ちます。そして昨年7月には株価がバブル崩壊後の最高値を付けたこともあって富裕層の消費は好調です。高級外車や百貨店の宝飾品の売り上げが増えています。

またインバウンド消費の増加も情報をかく乱しました。観光地を中心に外国人による消費・宿泊が増え、観光地では対応できる人手が足りなくなり、さらにオーバー・ツーリズムも問題になるほどです。観光業・小売り関連の活況が消費好調と思わせています。

しかし30年ぶりの大幅賃上げと言いながら、勤労者の実質賃金は19か月連続の減少となっています。賃金上昇率が物価上昇に追い付いていません。

さらに足元で2,100兆円を超えた家計の金融資産は物価高ですでに100兆円以上目減りし、株の資産効果を打ち消しています。米国では不動産も併せてコロナ後に50兆ドルも家計資産が増え、消費に大きな資産効果をもたらしているのとは状況が異なります。

Next: 政府の統計以上に値上がりしている生活費。車もホテルも手が届かない…

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