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中国、2035年には「年金亡国」へ。60歳定年と高い所得代替率が命取り、“体制維持”優先の政策に限界が来ている=勝又壽良

年末年始の住宅販売は不振

中国経済のカギを握る住宅販売は現在、どうなっているか。中国の民間不動産調査大手、中国指数研究院(チャイナ・インデックス・アカデミー)が1月2日公表したデータによると、年末年始3日間の主要40都市の住宅販売(1日平均、床面積ベース)は、前年同期比で26%も減少した。小都市が50%減と最も大幅な落ち込みだ。同研究院は、「住民の期待の変化と政策支援が2024年の不動産安定化の鍵になる」と指摘する。『ロイター』(1月3日付)が報じた。

こういう住宅販売状況から、24年の経済成長率に赤信号が灯っている。1つの手掛かりは、日本経済新聞が報じた現地エコノミストのアンケートがある。それによると、平均の予測値は4.6%へ低下する。需要不足が深刻化するなかで、供給を増やせば(モノの)価格は低下し、意図せざる在庫の積み増しが発生する。一時的な生産増は、本質的な回復に結びつかないのだ。報道では時々、生産増を大々的に取り上げるが、それは突発的である限り意味はない。むしろ、生産者物価指数の低迷時期を引き延ばすだけである。

中国経済の基調を判断するには、物価状況をトレースすれば一目瞭然である。デフレ基調に落ち込んでいるのだ。昨年11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比マイナス0.5%だ。これは2020年11月以来最大の落ち込みとなった。生産者物価指数(PPI)は前年同月比マイナス3%。1年2カ月連続でマイナスというデフレ領域に陥っている。こうした状況を受けて、中国人民銀行(中央銀行)は12月28日再度、消費者物価を押し上げる約束を確認する、と声明する事態に陥っている。

中国人民銀行は、マイナスの消費者物価指数をプラスに押し上げるとしている。これは、ついこの前まで日本銀行が行っていたビヘイビアである。中国も、日本同様の政策環境に追込まれていることに気づくべきだろう。デフレ基調に落ち込むと、物価をプラス圏へ押し上げるには多大のエネルギーを必要とするのだ。

世界10大リスクに「回復しない中国」

毎年、恒例になった米国のユーラシア・グループの「24年世界10大リスク」(1月8日公表)では、6位に「回復しない中国」が取り上げられた。その理由は、次の5点だ。

1. 経済リオープニングの弱まり。所得の伸びの鈍化、失業率の上昇、地方政府の財政再建、不動産価格の下落、連鎖するデフォルト(債務不履行)が信頼感と消費の重荷となる。

2. 不動産セクターの不振。最近の安定化努力にもかかわらず、不動産開発業者による土地購入の不振により、新規建設が貧弱なままであるため、景気押し上げ効果は期待できない。

3. 外需の低迷。国際的需要、特に米国と欧州からの需要は、高金利と世界経済の成長鈍化に制約され、2023年よりも回復力が弱まるだろう。

4. 政府の経済対応。不動産業者の債務不履行や銀行の破綻など、新たな金融ストレスに対 する中国政府の場当たり的アプローチは、信用を低下させ、すでに限界になっている政府の行政能力を試すことになる。

5. 政治だ。権力が習近平国家主席に集中し、成長よりも国家安全保障が優先されるため、消費者、企業、投資家の景況感が下方圧力を受けるだけでなく、経済や金融の脆弱性への対応を遅らせる。こうした状況は、中国経済の停滞をさらに深刻にさせ、中国共産党の能力と正統性の傷を露呈するだろう。

上記5点の中で、(5)の政治に最も注目すべきであろう。習氏が、成長よりも国家安全保障を優先させる結果だ。これが、経済や金融の脆弱性対応を遅らせて、中国経済をのっぴきならぬ事態へ追い込む。中国の国力を消耗させるだろう。不幸にも、西側経済学を理解する者が習氏の周辺から消えてしまった。最悪事態になっている。

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