「餃子の王将」を運営する王将フードサービスが、一部メニューを値上げすると発表したことが波紋を呼んでいるようだ。
報道によると、値上げは13の商品について来月21日から実施され、店内飲食の場合、値上げ幅は税込で22円~121円となるということ。
例えば同チェーンの主力である餃子の場合、西日本では297円から319円となり、初めて300円を超えることに。また東日本では319円から341円に引き上げられるという。
値上げの理由は原材料価格や人件費、物流費の高騰によるものといい、同チェーンの値上げは去年10月以来。この2年余りの間では4回目となるという。
餃子に欠かせないキャベツなども高騰中
「餃子の王将」発祥の地である関西エリアからは、ついに王将の餃子が300円超え…ということで衝撃が走っている今回の値上げ。
その理由としてあがっている「原材料価格」「人件費」「物流費」の高騰には、近年ではどの飲食チェーンも苦しめられているところだが、ここに来てより叫ばれているのが食材の値上がりだ。
餃子の王将側では、豚肉や卵の高騰が響いて……といった説明を今回しているようなのだが、それ以外の特に同チェーンでよく使われていそうな食材でいえば、例えば定食類やチャーハンには欠かせない「米」は、去年は猛暑のため各地で不作だったことにくわえ、コロナ禍明けで需要が旺盛になったこともあり、その価格が急上昇中。
銘柄によっては、昨秋に比べて2倍近くに跳ね上がっているものもあるといい、この状況は次の新米の時季まで続きそうだということ。
さらに、餃子の餡にも入っている他、野菜炒めや回鍋肉にも必須な「キャベツ」に関しても、出荷時期の今春の気温が高く、前倒しで出荷が終わってしまったため、4月以降より価格が上昇。
スーパーなどでは一時“ひと玉600円”という高値が付くなど、価格の高止まりが依然として続いており、お好み焼き屋さんなどは大いに頭を抱えているという。
餃子の王将では食の安心・安全を追求すべく、看板商品である餃子の主要食材である豚肉、キャベツ、ニラ、にんにく、生姜、小麦粉に関しては、すべて国産のものを使用。さらに、その他のメニューに用いられる野菜も、原則として国産のものを使用していると標榜しているだけに、それらの高騰が利益を大いに圧迫しているであろうことは、誰もが想像がつくといったところだ。
創業以来初となる売上高1,000億円突破
そういった状況なだけに、今回の値上げに対しても世間の反応としては「致し方ない」といった、寛容な反応が多いといった印象なのだが、現に餃子の王将といえば、先述の通りこの2年ちょっとの間で、すでに3回の値上げを行っているにも関わらず、直近の値上げがあった23年10月以降も、既存店客数はすべての月で前年を上回っており、値上げによって危惧される客離れは、ほとんど起こっていないといった状況。
そこに値上がりによる客単価のアップも相まって、今月15日に発表された2024年3月期決算では、売上高が1,014億100万円(前年同期比9.0%増)と、創業以来初となる売上高1,000億円突破となったというのだ。
こういった好調な業績を、同社では従業員の待遇のほうにも還元しているようで、昨年2023年の2万2,000円の賃上げに続き、今年の春闘では労働組合が要求した2万220円を大幅に上回る、平均月額3万9,162円の賃上げで妥結。くわえて今年からは、新卒社員の初任給も大卒で月額27万8,500円と、5万2,000円増やしたという。
さらには今回の報道を市場も好感的に捉えている模様で、株価のほうも上昇カーブということで、まさに好循環そのものといった同社による一連の値上げ。
もっとも、その反面では「300円超えるとなるときついな…」「値上げがしょうがないのはわかるけど」という嘆きの声もチラホラ。大幅昇給が続く王将の従業員とは異なり、昨今の賃上げムードからは置き去りにされているといった層にとっては、庶民の財布にも優しかった王将の相次ぐ値上げが、なんとも厳しい話であることは確かだろう。
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