成金国家・中国のG7コンプレックス
伊勢志摩サミットにおける首脳宣言の中で、対中国に関する文言は次のようなものであった。
「我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を懸念し、紛争の平和的管理及び解決の根本的な重要性を強調する」
「我々は、海洋安全保障に関するG7外相声明を支持する」
実は、たったこれだけなのである。
これは安倍首相にしてみれば外交的敗北以外の何物でもない。しかし中国は、名指しで批判されたわけでもないのに、「南シナ海問題とG7は何ら関係がなく、他国や関与すべきではない事情に口出しすべきではない」「G7は経済に集中すべきだ」「G20はG7より多くの国を代表している」といったように対抗意識丸出しだ。
この首脳宣言は、中国というよりは地域の国家すべてを対象にしているように読み取れるのだが、なぜ中国はあたかも自国が痛烈な批判をされたがごとく過剰反応を示したのだろうか。その答えを探るには、中国が自国のステイタスをどのような場で担保したいのかを考える必要がある。
言うまでもなく中国はG7のメンバーではない。なぜか? なにも中国がロシアのようにハブにされたわけではない。中国が「先進国」ではないからだ。
つまり、先進7カ国とは第二次世界大戦後いち早く「先進国」になった国を指し、中国はごく最近になって経済大国にのし上がったいわば“成金”だから、先進7カ国の仲間に入れてもらえないのだ。
G7が駄目でも国連がある
この冷徹な事実は中国のプライドをいたく傷つけている。今やGDP世界第2位の経済大国であるのにも関わらず、宿敵日本、敗戦国である日本が「先進7カ国」の仲間入りをしているからだ。
だから、中国は常にG7の動向には敏感だし、ましてや日本が議長国になり首脳宣言などで中国を名指ししようものなら、中国はとても冷静ではいられないのだ。場合によっては「一発かましてやる!」といったことにもなりかねない。
そして実は、中国はある意味「国際的なルール」に則って、日本に対して「一発かましてやる!」ことが可能なのである。
G7に入れてもらえない中国が、自国のステイタスに納得できる場とは、ずばり「国連」である。なぜならば国連、とりわけその中心となる安保理(安全保障理事会)こそは、世界を牛耳るための体制(安倍首相の言う“戦後レジーム”)そのものだからである。