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なぜ「大阪王将」店舗数はあっちの半分でも急成長?未来を見据えた二刀流戦略とうまいビジネスモデル=山口伸

「餃子の王将」と「大阪王将」は共に“王将”ブランドの中華屋チェーンとして知られる。1985年以降、両者は明確に分かれ店舗を増やしていったが、現在では店舗数で2倍の差があり、店舗事業では餃子の王将が勝った。しかし大阪王将はブランド力を活用し、外食事業以外でも稼いでいる。本稿では、二刀流で成長し続ける「大阪王将」のビジネスモデルと近年の施策について調べてみた。(山口伸)

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プロフィール:山口伸(やまぐち しん)
本業では化学メーカーに勤める副業ライター。本業は理系だが、趣味で経済関係の本や決算書を読み漁っており、得た知識を参考に経済関連や不動産関連の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。

似ているようで意外と違いは多い、2つの「王将」

イートアンドホールディングスが運営する「大阪王将」は2024年2月期末時点で国内337店舗を展開する。対する「餃子の王将」は同時期に729店舗を展開しており、ライバルに2倍の差を付けられている。大阪王将は餃子の王将からのれん分けする形で生まれたが、商標問題に発展し、1985年の和解を経て「大阪王将」を称するようになった。

同じ王将ブランドとはいえ、両者の違いは意外と多い。

両者とも餃子、麺類、飯物とスタンダードな街中華のメニュー構成だが、価格面では大阪王将の方が100円~150円程度高めである。かつ餃子の王将が地域別で画一的なメニューを提供するのに対し、個店主義の大阪王将では加盟店が独自でオリジナルメニューを提供することもある。

そもそもFC比率が大きく異なり、餃子の王将は25%、大阪王将は87%である。また、直営主義の餃子の王将では独自に社員教育制度を設けているが、大阪王将では認定制度を設けるのみで、加盟店の職人によって味は左右されやすい。大阪王将のファンにはこうした違いを楽しむ客もいるようだ。

本部による直営店方式とFC加盟方式ではやはりスピードに差があるのだろう。店舗数に2倍の差があるのは上記の通りだが、大阪王将が300店舗を達成した2011年の時点で餃子の王将は600店舗を達成していた。以降、大阪王将の店舗数は300店台に留まっている。

同業態での限界を感じているのか、イートアンドHDは近年、ベーカリー業態を開拓するほか、21年にはタンメンの「横濱一品香」を子会社化している。同社が24年2月期末時点において外食事業で展開する442店舗のうち105店舗は大阪王将以外の業態だ。

対照的に王将フードサービスは「餃子の王将」のみで勝負してきた。

イートアンドホールディングス<2882> 週足(SBI証券提供)

イートアンドホールディングス<2882> 週足(SBI証券提供)

王将フードサービス<9936> 週足(SBI証券提供)

王将フードサービス<9936> 週足(SBI証券提供)

コロナ禍で業績は悪化

大阪王将は近畿や首都圏の店舗数が多く、主に駅前に出店しロードサイド店の数は少ない。コロナ禍では都市部偏重姿勢が要因で業績が大幅に悪化した。

20年3月期から24年2月期における外食事業の業績は次の通りである。
(※決算期変更のため21年2月期末以降は2月決算。21年2月期のみ11か月を計上。)

売上高:141億円 → 103億円 → 121億円 → 130億円 → 145億円
セグメント利益:2.0億円 → ▲4.0億円 → 0.1億円 → 0.6億円 → 2.8億円
店舗数(外食事業全体):491 → 470 → 472 → 463 → 442

この間、大阪王将の直営店に関しては繁華街の不採算店を閉鎖、住宅街近辺など生活立地へのシフトを進めた。だが人流の回復や値上げの影響もあり、24年2月期でコロナ禍前の水準に戻っている。

食品事業も稼ぎ頭に

上記の通り店舗数では餃子の王将に差をつけられ、コロナ禍でも打撃を受けた外食事業だが、食品事業が牽引してイートアンドHD全体では成長し続けてきた。

食品事業に参入したのは、1993年に生協向けの冷食を製造したのがきっかけだ。その後、生協だけでなく一般スーパー向けにも商品を供給し始めた。現在、食品事業では「大阪王将 羽根つき餃子」を筆頭とする餃子・麺類などの一般向け冷食を製造するほか、飲食店向けに餃子の卸販売を行っている。たまに、居酒屋の餃子が大阪王将の味に近いと感じることがあるのはこのためだ。

Next: 二刀流で稼ぐ“大阪王将”。今後はさらに効率化が進む?

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