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なぜ「大阪王将」店舗数はあっちの半分でも急成長?未来を見据えた二刀流戦略とうまいビジネスモデル=山口伸

一般向け冷食でみれば、同社の焼き餃子は金額ベースで3分の1、水餃子では半分以上ものシェアを誇る。人気の理由は味もさることながら、やはり「大阪王将」のロゴが記載されているからだろう。店舗に寄る機会が少なくても“王将”の名を冠すれば味に優れている印象を持ってしまう。

もともとスーパーの冷凍餃子はほぼ味の素の冷凍“ギョーザ”が占めていたが、2000年代から大阪王将がそのシェアを奪っていった。現在では味の素と大阪王将で8割のシェアを占めるという。

2012年3月期時点で食品事業の売上高は91億円と、外食事業(97億円)に匹敵する事業となっており、19年3月期ではそれぞれ149億円/143億円である。つまりイートアンドHDは食品と外食の二刀流で稼いできたのだ。

コロナ禍では食品事業が牽引

コロナ禍で打撃を受けた外食事業だが、食品事業に助けられる形で全社の業績を伸ばした。巣ごもり需要が下支えしたが、「大阪王将 羽根つきスタミナ肉餃子」がヒットしたことや餃子以外の冷食を強化したことも影響しているという。

先ほどと同様、20年3月期から24年2月期における各事業及び全社の業績は次の通りである。
(※決算期変更のため21年2月期末以降は2月決算。21年2月期のみ11か月を計上。)

全社売上高:304億円 → 260億円 → 309億円 → 330億円 → 359億円
外食事業_売上高:141億円 → 103億円 → 121億円 → 130億円 → 145億円
食品事業_売上高:163億円 → 157億円 → 188億円 → 201億円 → 214億円

20年3月期時点ですでに食品事業が外食事業を上回っており、その後も食品事業は伸び続けた。21年2月期は157億円と減少して見えるが、12か月換算すれば前年を上回っている。コロナ禍での業績は多角化がリスク分散をもたらした好例といえる。

なお、今後も冷食市場は伸びると同社は見込んでおり、両事業の差はますます開いていくことだろう。

店舗は簡素化&機械化を進める

外食事業に話を戻すと、大阪王将については近年2つの施策を進めている。ざっくり言えば簡素化と機械化だ。

店舗の構造に関しては「街中華モデル」により「簡素化」を進める。街中華モデルは同社が2018年11月から出店している新しいスタイルの店舗で、黄色い看板と古い中華屋のような簡素な内装が特徴だ。安っぽい丸椅子が置かれ、オープンで入りやすい雰囲気がある。悪く言えばチェーン店とは思えないデザインだ。厨房を見渡せる構造は安心感をもたらす狙いがあるというが、単純にコストを下げたい狙いもあるのだろう。

Next: 最低限、店舗を残しておけば良い?振り切った大阪王将のビジネスモデル

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