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ヘッジファンドも騙された「投資詐欺」を見破る3つのポイント=俣野成敏

ヘッジファンドや銀行も騙された、初歩的な投資詐欺の手口

例を見てみましょう。2008年に世界中を驚かせた、米ナスダック・ストック・マーケットの元会長、バーナード・メイドフによる詐欺事件です。

メイドフ元会長が運用していた投資ファンドには、多くの著名人やヘッジファンド、銀行、証券会社などが投資をしており、その被害総額は500億ドルに上るとみられています。

詐欺の手口は単純なもので、「ポンジ・スキーム」と呼ばれる古典的な手法です。つまり、後から参加する出資者のお金を“配当金”と偽って、先に参加している出資者に渡し、運用益が出ているように見せかける手法です。実際は運用していなかったわけですから、明らかに(2)の信用リスクです。

手口自体は簡単ですが、それでもたとえば集めたお金を、そのまま年10%の配当金として別の投資家に還元した場合、運用などしていなくても10年は配当を払い続けることができます。

ウォール街の名士だったメイドフ元会長の元へは、次々と出資希望者がやってきたため、そのお金を使って先の出資者への払い戻しなどにも対応していました。

この詐欺事件が明るみになったきっかけは、2008年9月のリーマン・ショックです。投資家たちが一斉に資金を引き揚げたため、ついに払い戻しに応じ切れなくなり、破綻しました。

メイドフ元会長はナスダック創業時の功労者であり、上場株の場外取引システムをとり入れた先駆者でした。つまり、もともとは技術肌の人でしたが、徐々に会社の業務を資産運用へとシフトさせていきました。

本人が著名なこともあって当初はうまくいっていましたが、どこかで運用につまずき、ウソでウソを覆い隠すようになったものと推測されます。

「詐欺ではないか?」早くから疑問も

順調に見えていたときにも、元会長の運用ファンドに疑問を呈する人はいました。「一度も成績が落ちることなく、毎年10%以上も配当を出し続けるのはおかしい」という声でした。

実は、米証券取引委員会(SEC)の職員は、少なくとも1999年頃から元会長の不正行為に関する情報を得ていたといわれています。なのにSECがその不正を見逃していたのは、メイドフ元会長が彼らと懇意にしていたからのようです。つまりファンドの矛盾自体は、早くからわかっていたのです。

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