fbpx

「給食にコオロギ食」徳島大発ベンチャーが自己破産。飼料向けに方針転換も国から補助金が出ず…手厚い優遇説を身をもって否定する破産劇に

食用コオロギの生産・加工を手がけてきた徳島大発ベンチャー「グリラス」(徳島市)が事業を停止し、徳島地裁に自己破産を申請したと報じられている。

グリラスは2019年に設立され、徳島県内の廃校を借りるなどしてコオロギを量産。20年に無印良品でコオロギせんべい、22年に県内のファミリマートでコーンスナックを発売したほか、ペットフードにも展開し、23年5月期の売上高は3800万円に達していた。

しかし、昆虫食への抵抗感からインターネットで批判を受けたこともあり、業績は低迷。畜産・水産向けに飼料として大量生産する新事業を模索したものの、設備の導入に必要な国の補助金が受けられず、事業継続を断念したという。

食用コオロギ業界の退潮は決定的に

先述の通り、一時期は食用コオロギパウダーを使用したお菓子などが、全国的に展開されるなど、食用としての普及の動きが顕著だったコオロギ。

ただその反面で、コオロギ食普及に対する消費者の嫌悪感は根強く、その煽りを受ける形で、今年2月には長野県内で食用コオロギの養殖事業を手掛けていたベンチャー企業が創業3年足らずで破産。それに続く形となった今回の「グリラス」の破産で、日本国内における食用コオロギ業界の退潮は決定的となった印象だ。

【関連】食用コオロギ養殖ベンチャー、創業3年足らずで破産。地元経済界などから融資を集める反面“クラファン大爆死”など一般消費者の理解は広がらず?

2050年には100億人に達すると予測されるなど世界の人口が急増するなかで、重要な栄養素であるたんぱく質の新たな確保源として、また飼育時の温室効果ガス排出量や必要な水・エサの量などが、鶏・豚・牛といった従来の家畜と比べ圧倒的に少なく済むなど、そのエコぶりにも注目が集まっていたコオロギ。

しかし、昆虫食に対してのそもそもの根強い抵抗感にくわえ、さらにそれが消費者の意思に関わらず、じわじわと普及が進んでいるといった状況が、世間からのさらなる嫌悪感を募る格好となり、時にはネット上で“炎上”する騒ぎも多発。

その代表的な出来事とされるのが、今回倒産したグリラスが行った県内高校生へのコオロギ粉末を使った給食の提供。実際には希望者のみに提供されたということだったのだが、このことが世間から「コオロギ食を給食という形で子どもに強要している」と大炎上

さらに「安全性や衛生面は大丈夫なのか?」「アレルギー対策は十分か?」などの批判が渦巻くこととなり、実際グリラスはこの騒動の影響で、大手スーパーと進めていた商談がなくなるなど、大きな痛手を追うことになったというのだ。

国からの補助金“却下”が破産の引き金に

いっぽうでコオロギ食を巡っては、その生産業者などに対して国から手厚い補助金が出ているといった噂が出回り、なかには「6兆円以上の血税が投入」といった説も流布。

さらに河野太郎氏がコオロギを試食して「おいしかった」と感想を述べたことも相まって、国がコオロギ食を大いに推進しているとも、まことしやかに囁かれる事態となった。

実際のところ“6兆円”という数字は、農林水産関係予算が年間2兆2千億円規模(2022年度)ということから考えても、まさに荒唐無稽といったところで、またコオロギ生産業者のみに特化した手厚い優遇というもの存在しないという。

しかしながら、数年前のコオロギ食が俄かにかつ謎に普及が進んでいた状況を受け、そのもっともらしい“裏事情”として、一部で信じ込まれてしまうこととなったのだ。

現にグリラスは、批判の声が根強い食用コオロギの生産・加工の道をいったん諦め、畜産・水産向けの飼料として大量生産する新事業を模索したとのことだが、設備導入に必要な補助金の申請が国から却下され、このことが事業継続断念の直接的な理由となった模様。一部界隈で噂されていた、コオロギ養殖業者などへの国からの手厚い優遇など存在しないということを、同社は身をもって証明した格好だ。

Next: 「SNSのせいにしているけど…」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー