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世界に誇る「日本の科学技術力」はなぜ凋落したのか?真犯人=内閣官房参与 藤井聡

豊かな国しか科学技術力を進歩させられない

日本の科学技術力の凋落は目を覆うばかりのもの――ですが、この推移、どこかで目にした気がしませんか?

――そうです、「我が国のGDP(名目値)の推移のグラフ」です。

こちらは、GDPのシェアの推移
http://ameblo.jp/gensinhedge/image-11232044725-11933752817.html

ご覧の様に、1995年をピークに、論文数の推移とよく似た形状で推移していることがわかります。

ちなみに、アメリカや中国の論文数シェアの推移も、このGDPシェア推移とよく似た形で推移しています。つまり、今日の科学技術力は、GDPが増えれば増え、減れば減るというプロセスで決まっているのです(なお、両者の間には、数年の時間遅れ(ラグ)があります。これは、一般に研究をやってから論文にまとまって出版されるまで、数年の時間を要するのが一般的だからです)。

また論文数シェアはGDPシェアに依存しているという実証的知見は、かねてから指摘されているものでもあります。つまり、豊かな国しか科学技術力を進歩させられないという次第。
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/458.html

なぜそうなっているのかと言えば、現代の科学技術の発展には、「大規模な実験施設や研究組織が必要」だからです。オカネがある国では、いい施設が提供され、十分な報酬の下、多くの優秀な人材が研究界に投入されていき、科学技術も発展していく、という次第。

ただし、それに加えて、科学技術の発展には「それぞれの国の産業界で、その科学技術がどれだけ直接的に需要されているか?」ということが重要であることも主要な理由です。

日本では新しい技術が実業界で活用されない

実際、筆者が科学技術活動に従事している学術分野では、確かに90年代前半までは新しい技術開発は即座に実業界で活用されていく実感があったのですが、日本がデフレ化した90年代後半以降、実業界でそれが活用されるケースが極端に減っていきました。

例えば、「橋梁」の現場では今や、新しい技術開発の需要は低迷し、とにかく旧来型の工法で安く大量生産する風潮が支配的と聞き及んでいます。これでは日本の橋梁技術の進歩が停滞していくのも必然です。

さらには、世界各国の鉄道輸出競争で日本勢の敗北が目立つようになっていますが、それも日本で鉄道建設の現場が減ってきているのが大きな原因です。現場がなければ、技術は磨かれないのです。

筆者の学位研究であった「計量経済分析に基づく都市活動の需要予測技術」についても、90年代前半までは実務適用現場が国内にも多くありましたが、2000年代に入ってから全くと言っていいほど、新規技術が需要されなくなりました。つまり、デフレがあらゆる「技術の現場」を殺し、それを通して、「科学技術力の発展」が停滞していったのです。

しかも、デフレのために税収が減ったあおりを受けて、あらゆる研究現場で予算カットが横行しているにも関わらず、「質の高い成果をより多く生み出すべし」という要求が政府から突きつけられています。結果、ほとんどの大学・研究組織では今、「ポスト削減」と「改革」の嵐が吹き荒れています。そして、大学教員はこの「改革疲れ」のために、研究活動のための時間も予算も、そしてそのための情熱も失いかけているのが実態です――。

そしてこうした流れを受け、少なくとも筆者が関わる様々な「学会」では、2000年代頃から真理やさらなる技術を追究しようという活力が急速に低迷し、ニヒリズム(虚無主義)が蔓延していった様を鮮明に記憶しています。

ですから、今でこそ日本はノーベル賞をたくさん受賞していますが、これは全て過去の遺産。今のデフレが継続すれば、10年後、20年後には、それも見られなくなるのは明らかです。

そして、このまま日本の科学技術力が低迷していけば、日本の衰退は必定です。繰り返しますが、「資源の無い国日本」は、「付加価値」を生み出し続ける力が不可欠であり、その根幹に「科学技術力」がどうしても必要だからです。

Next: 日本のGDPが衰弱した原因は「デフレ」と「緊縮財政」思想だ

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