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汗水垂らして働く運送ドライバーが家すら買えない「日本国の病」=三橋貴明

2016/8/21号より

昨日に続き、運送サービスの話題です。

なぜ、運送サービスについて取り上げるかといえば、まずは昨日も書いた通り、90年の規制緩和が、

「需要が十分にある時期(97年まで)は、サービス価格の低下(のみ)をもたらした」
「需要が縮小する時期(98年以降)は、賃金の低下をもたらし、生産者を貧困化させた」

と、規制緩和の「善と悪」がもろに出た業界であるためです。

さらに、デフレ期に規制「強化」に踏み切らなかった結果、人手不足が深刻化しています。現状、日本の「三大人手不足業界」の一つになっています。(残り二つは、介護と土木・建設)

トラック運送業界が危機的な運転手不足に直面している。規制緩和による競争の激化で収入が減る一方、近年はインターネット通販の拡大で細やかなサービスが求められ、負担は増している。「社会の血管」に例えられる物流システムをこの先も維持できるか、瀬戸際の状況が続く。(中略)
トラック運送業界は1990年の規制緩和で新規参入が進み、事業者が急増した。過当競争のあおりで運転手の平均年収は減り、大型トラックの場合、ピーク時(97年)の510万円に対し、2015年は437万円。全産業の平均より50万~60万円も低い状況が続いている。(後略)
出典:トラック運転手不足深刻 物流システム瀬戸際 – 読売新聞

読売新聞が「規制緩和による競争の激化で収入が減る」と、正しいことを書いています。ちょっと、吃驚。

ところで皆さん、不思議に思いませんか?

これだけ人手不足が深刻化しているにも関わらず、なぜ運送サービスでは介護や土木・建設のように、

ならば、外国人労働者を

という話が出てこないのでしょうか。

それは「免許」の問題です。日本国内でトラックドライバーの職に就くには、日本語の運転免許試験に合格しなければならないのです。

以前、ある運送会社が「ベトナム人ドライバー」の育成にチャレンジしたのですが、やはり無理だったようです。日本語を「普通に」話せ、読み書きができない限り、日本の運転免許は取得できません。

今後、政府が「ならば、外国語でも運転免許を取得できるようにしよう」などと、アホな(究極的にアホな)規制緩和に乗り出さない限り、我が国の運送サービスは「日本国民」で賄うしかないのです。

というわけで、運送サービスは「人手不足を日本国民で、いかに補うのか?」の試金石になると思います。

もちろん、中長期的には「運転サポートシステム(あるいは自動運転)」や「ドローン」など、技術開発や設備投資による生産性向上が切り札になります。とはいえ、短期的には「給料を引き上げる」ことで、業界に人手を呼び込む必要があるのです。

Next: 日本が目指すべき「運送サービスで働き、家を建てられる国」の条件

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