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「シェアハウス」に例えて理解するフランス大統領選とEU、本当のポイント=矢口新

新たな波乱要因

世界各国80の中央銀行に対する調査では、中央銀行の外貨準備担当者のうち70%が、ユーロ圏諸国の国債残高を減少させていることが分かった。うち、3分の1はユーロ圏諸国の国債価格の急落が最大懸念と考えている。彼らの多くは英国債を買っているようだ。世界の中央銀行の多くは、ロンドンが国際金融の中心地としての地位を保てるかは不透明としながらも、ブレグジットの悪影響は大きくないと考えている。

ユーロ圏諸国の国債を売る最も大きな理由は、利回りの低さだ。例えば、ドイツ国債の利回りは以前より大きく上昇し、10年債は0.20%前後とプラスに転じているが、残存期間8年債までは未だマイナス利回りだ。フランス国債でも、残存期間4年債まではマイナス利回りとなっている。一方の英国債は短期から長期まで、すべてがプラスの利回りだ。

また、年金や保険などの長期投資運用では、マイナス利回りは投資対象とは成り得ないので、投資適格の社債を買うため、社債の価格が歴史的な割高となっている。ECBの金融政策に変更があれば、これらが急落するリスクは高い

ちなみに、彼らの80%は、トランプ大統領の当選により、米国債への見方を変えたことはないと答えた。
Even after Brexit, central banks choose pounds over euros: survey – Market Watch

資金の借り手が、貸し手から金利を受け取るマイナス金利は、市場経済ではあり得ない。マイナス金利政策は、市場経済を根底から揺るがす暴挙だ。それがまかり通っている諸国は、強権により市場経済を押え込んでいる。

強権が人々の日常生活を圧迫するのは珍しいことではない。歴史を見れば、移動や職業選択、婚姻、出産などの自由が保障されたのは、ごく最近になってのことだ。ポピュリズムなどと、大衆の意向を見下げた表現こそが、エリート官僚が社会を主導できるとの思い上がりを示している。そうしたエリート官僚が、「資金の借り手である国が、貸し手である民間銀行から金利を受け取るように」仕向けたのが、マイナス金利政策だ。

ブレグジットはそうしたEUの強権からの離脱を求めたものだ。EUによる強権の弊害は、ユーロ圏であるフランスやイタリア、スペインなどで大きいので、フランス大統領選挙が投げかける問題提起の意味は大きい。ル・ペン候補が勝とうが負けようが、EUやユーロが機能していない事実には変わりがなく、そのことをEU内約半数の人々が気付き始めているのだ。

ここにきて、新たな波乱要因として浮上してきたのが、トランプ大統領のシリア攻撃だ。トランプ大統領は選挙公約を次々と反故にしているが、ここでも自らが否定していた「世界の警察」としての役割を復活させた。しかも、自国で問題となっている警察官と同様、証拠もなしに印象だけでの、いきなりの発砲だ。

このことは、2つの点で波乱要因となりうる。1つは、ル・ペン候補を、トランプ大統領と重ね合わせる人は、ル・ペン候補もまた「嘘つき」だと見なしかねないことだ。

もう1つは、米軍の関与がなくなることにより、一時は政府軍の勝利で終わると思われ始めていた、シリア難民問題の出口が、また見えなくなったことだ。シリア難民は、アサド政権が(圧制により?)安定していた時ではなく、不安定な内戦状態になってから急増した。シリア難民問題が継続する、あるいは好戦的なトランプ米国がシリア以外の国々からも難民を増加させることは、ル・ペン候補の移民政策が支持されることにもつながるのだ。

Next: フランス大統領選挙でドル/円相場と日本株はどう動く?

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