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FOMC通過で見えた「投機筋の誤算」この円高の本当の理由は何なのか?=E氏

なぜ「緩やかな」円高なのか?

以上が先週のFOMC以降のドル安の背景ですが、こういった状況にも関わらず、FOMC直後の円高進行が比較的軽微だった理由についても触れておきます。それは、今回のFOMC声明は概ねコンセンサス通りですが、利上げに関するコンセンサスと資産圧縮に対するコンセンサスの方向性が異なっていたからです。

今書いたように、利上げはハト派的な見方でしたので、年内の利上げは微妙という向きが増えてきています。しかし、その一方で資産売却に関しては、タカ派的な見方が増えつつあった中で、予想通りにタカ派になったという意味でコンセンサスどおりなのです。

資産圧縮がタカ派であった根拠は、今回の声明文にある「委員会は現在、経済がおおむね予想通りに進展するとの想定で、バランスシート正常化プログラムを比較的早期に開始すると見込んでいる」という文言からで、この中の「比較的早期」という言葉のため、資産圧縮開始時期が早ければ9月という見方の確度が高まりました。

この数ヶ月、複数のFOMCメンバーから資産圧縮開始時期は今年9月という意見が増えていましたが、これまでのFOMC声明では資産圧縮は年内の開始という表現でした。このため、資産圧縮に関する見方は「早ければ9月のFOMC、遅くとも年内」というのが従来のコンセンサスでしたが、これに対し、今回の声明で「比較的早期」という表現が使われたのです。

「利上げ」と「資産圧縮」の方向性に齟齬

もし、イエレンFRB議長始めとするFOMCメンバーが12月のFOMCでの資産圧縮を考えていたら、今回「比較的早期」という文言は使わず、従来どおりに年内の開始が望ましいという表現になっていたはずですが、今回「比較的早期」と書きました。

今後のFOMCの開催スケジュールが今年9月、10月、12月しかないことを考えると、この文言のため、従来よりも9月での資産圧縮開始の確度が高まったと判断されるのは自然なことですから、今回の声明で資産圧縮に関してはややタカ派の判断と考えられたのです。

利上げはFFレートの引き上げですが、資産圧縮は長期債の売却を伴うので、米債の長期ゾーンの利回りが需給悪化で売られる可能性が高まります。

この時期が従来考えられていたよりは前倒し気味になると思われたので、FOMC声明が発表された直後は利上げに関しハト派とされたことで10年債利回りは急低下しましたが、すぐに10年債を初めとする長期債の利回りは声明発表前の水準より上昇しています。

この結果、(日銀の牽制で)10年債利回りが0.1%以下で留まっている日本の長期金利と比較して金利差が開いたことため、ドル安ほど円が買われなかったのです。

このように、今回のFOMCはコンセンサスどおりでサプライズがないと言いながらも、利上げと資産圧縮のコンセンサスの方向性が異なったために、ドル安と円高の動きが異なったというのがFOMC以降の為替相場の変動の原因となっており、これに(結果的にミスジャッジをした投機筋による直前の米国債ショートの巻き戻しも加わって)あたかもFOMCがサプライズだったかのような動きをしたのです。

Next: すでに余力一杯の円ショート筋、今後当面は円高基調に

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