ヘッジファンドの「誤算」
投機筋と一言で言っても、みな同じ方向性で売買をしているわけではないし、ヘッジファンドだからといって一般投資家より上手く運用できるわけではありません。
例えば、この数ヶ月、投機筋は米金利と課なら金利との利回り格差に着目してカナダドルのショートを膨大に積み上げていましたが、先月のカナダ中央銀行による利上げで、短期間のうちにほぼ全てのショートをカバーしています。
また、あまりにもレバレッジを効かせすぎているので、直近の低ボラティリティ、低出来高マーケットでは自らの売買によるマーケットインパクトで負けることが多々あります。
このように、投機筋を「ドタバタしているけれど、決して上手いとは限らない投資家」だとすると、7月中旬にイエレンFRB議長が議会証言で予想外にハト派の証言をしたにも関わらず、今回のFOMC前に「声明でタカ派的な見方が出る」という目論見をしてもおかしくないでしょう。
イエレンFRB議長の議会証言前のFOMCメンバーによる要人発言は概ねタカ派でしたが、それは資産圧縮の時期についてのものであり、次期利上げ時期や今年の利上げ回数に対するものではありませんでした。
しかし、議会証言でイエレンFRB議長は直近の物価上昇率低下を一時的としながらも、FRBとしては無視できない存在として認識していることを明らかにしたので、米国の期待インフレ率低下をFRBも認めているという認識になっていたのです。
投機筋にとってはサプライズ
今回のFOMC声明はこのように、イエレンFRB議長の議会証言で物価上昇率が目標を下回っているという点に触れていたことを考えれば、今回のFOMC声明は十分ハト派的な内容になると想定でき、実際、今回、物価動向に関しては、6月声明の「2%をやや下回っている」から今回「2%を下回っている」に変更しています。「やや」が抜けたことで、一時的と見ている物価の弱さがより持続的になる可能性を考慮しているのです。
なので、イエレンFRB議長の議会証言でFOMCがハト派的な見方になっていると判断していた大方の投資家にとっては、今回の声明は予想通りでしたが、(何を根拠にそう考えたか不明ですが)FOMCでタカ派的な声明になると見越して米国債のショートを積んでいた一部投機筋にとってはサプライズだったので、ポジションの巻き返しが生じ、コンセンサスどおりだったにも関わらず米国債利回り低下とドル安進行が生じたのです。