安倍首相は24日の参院環太平洋経済連携協定(TPP)特別委員会で、あくまでトランプ次期大統領が就任初日に離脱を表明しているTPPの早期承認を目指す方針を堅持する考えを改めて表明した。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。
いつの間にTPPは「保護主義台頭への歯止め」になったのか?
説得力のない「TPP早期承認を目指す理由」
「自由貿易を進めて、自由世界において第2位の経済力を持つ日本が、保護主義の台頭に対して、しっかりと歯止めをかける役割を担うべきではないか」
安倍首相は24日の参院環太平洋経済連携協定(TPP)特別委員会でこのように述べ、あくまでトランプ次期大統領が就任初日に離脱を表明しているTPPの早期承認を目指す方針を堅持する考えを改めて表明した。
「米抜きでのTPPは意味がない」とまで言い切った総理が、TPPの早期承認を目指す理由として挙げているのが「保護主義の台頭に対して、しっかりと歯止めをかける役割を担う」ということ。
しかし、こうした主張は説得力のあるものとは言えない。それは、この数年国内でのTPPの議論の過程で「保護主義の台頭に歯止めをかけること」が議題になったことはないからだ。
トランプ大統領が誕生することになって突然TPPに「保護主義の台頭に歯止めをかける」という役割を付け加えるのは筋が通らない。
さらに「トランプ次期大統領=保護主義者」というレッテルを貼ったような発言にも疑問を覚える。トランプ次期大統領がこうしたレッテルを貼る総理と「信頼できる指導者」として付き合っていこうとするだろうか。
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