変動金利の住宅ローンは、突如「超ハイリスク商品」に化ける!
日銀は長期金利の決定過程を隠したがっていますが(断言)、日本の財政持続に懸念が生じた場合、必ず長期金利は上昇します。
<金利決定の計算式>
長期金利=期待インフレ率+期待潜在成長率+リスクプレミアム
期待インフレ率と期待潜在成長率は、通常はゆっくりと上昇または下落していきますが、その一方で、リスクプレミアムは短期間で急上昇してしまう性質のものなのです。
借金をしている側は破綻寸前まで「私には返済能力があります。絶対に大丈夫です」と言い続けるため、平常時のリスクプレミアムは0%に近い値を示しています。しかしこのリスクプレミアムは、他の要素(期待インフレ率や期待潜在成長率)とはまったく性質が異なるものとして理解しておかなければなりません。
実際の事例として、ギリシャ10年物国債の金利推移を見てみましょう。
<ギリシャ 10年物国債の金利>
2009年1月1日 5.79%
2010年1月1日 6.89%
2011年1月1日 11.38%
2012年1月1日 34.31% ※2012年2月1日 36.59%(ピーク)
2013年1月1日 10.82%
2014年1月1日 8.68%
2015年1月1日 11.27%
2016年1月1日 9.71%
2016年12月1日 6.68%
2009年の前半までは5%前後で安定的に推移していましたが、2010年に差し掛かるあたりから、急激に金利が上昇しています。ギリシャでは、たった1年で金利が2倍、3倍と上がってしまいました。
平時の期待インフレ率や経済成長率が1年で2倍になることはありえません。この急激な金利上昇はリスクプレミアム特有の動きです。
「もうこの国債には価値がない」と市場が認識している場合、いくら高い金利を設定しても買い手はつきません。国債を買う立場の人は、国債が紙屑になるかもしれないリスクの対価として上乗せの収益(=リスクプレミアム)を要求します。
この市場原理は、場所と時間を超えて世界共通です。ギリシャ国債の場合、そのピークは2012年2月でした(金利36.59%)。
もちろん、日本で変動金利の住宅ローンをシミュレーションする場合は、利息制限法により最大でも金利上限が15%までに制限されるので、それ以上の想定は不要です。
しかしながら一般論として、住宅ローンで「消費者金融並みの高金利」を要求された場合、多くの人は支払い不能に陥るでしょう。
変動金利タイプの住宅ローンは、リスクプレミアムの上昇局面で突如、「超ハイリスク商品」に化けてしまうのです。