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いざ衆院解散!日本が「消費増税」で選べる3つのオプションとは?=内閣官房参与 藤井聡

PB改善を狙う「(2)増税で借金返済」は最悪オプション

では、(2)~(4)の「アクセル」に着目すると、そのアクセル度は、

(2)増税で借金返済 < (3)増税で教育社会保障 < (4)増税でワイズスペンディング

となります。

まず、「(2)増税で借金返済」は最悪のオプション。アクセル度は文字通り「ゼロ」です。

プライマリーバランス(PB)の点で言うなら、この「(2)増税で借金返済」オプションは、増収分だけPBを「改善」させますから、経済は自ずとその分、縮小するからです(PBは改善すると経済は縮小するのです。詳細は『プライマリーバランス亡国論』を参照ください。)

したがって、このオプションが採用されれば、日本は二度とデフレ脱却を果たすことができない程のダメージを被ることになります。

借金返済より幾分マシな「(3)増税で教育社会保障」の危険性

この「(2)増税で借金返済」よりもマシなのが、「(3)増税で教育社会保障」です。

少なくとも、「増収分」を「支出」しますから、PBは変化しません。繰り返しますが、景気を低迷させるのは「PB黒字」「PBの改善」なのですから、このオプションの景気「悪化」効果は、「借金返済」オプションよりもマシな水準となります。

むしろ、経済学の基本的な理論である「均衡予算乗数理論」(あるいは、均衡財政乗数理論)に基づくなら、増税してそのまま支出すれば、その分GDPが拡大することが知られています。

直感的に言うなら、増税して吸い上げた分の一部は、確実に貯蓄に回っていた(そしてそれによってGDPが縮小していた)一方、政府が吸い上げて使えば、貯蓄に回る分は「ゼロ」になり、結果、経済は拡大する、という次第です。

しかし、この均衡予算乗数理論は、「税の種類」の区別を考慮しない理論で、現実に適用するには、留意が必要です。経済(GDP)に対するインパクトはもちろん、税の種類によってまったく異なるからです。

「企業の内部留保」がやたらと多い今日、法人税を増やしてそのまま支出すれば、経済成長が期待できます。今や、「企業」は「家計」の約2倍もの金額を貯蓄しているのですから、「政府が吸い上げて使う」効果は、理論通りにプラスになることが期待できるのです(https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf によれば、家計約13兆円に対して、企業は約24兆円も毎年貯蓄を増やしています)。

一方で、消費税が増税されれば、GDPの6割を占める消費に対する「罰金」効果が拡大し、消費それ自身が低迷する「ブレーキ」が大きくかかります。しかも、昨今では消費のメイン主体である世帯の貯蓄は、企業のそれの半分程度。だから、均衡予算乗数理論が主張する「政府が吸い上げて使う」効果は限定的です。

つまり、「(3)増税で教育社会保障」は「(2)増税で社会保障」よりは「マシ」ではありますが、だからといって、増税の「マイナス」を埋め合わせるほどの「アクセル」が確保できるかどうか分からないのです。

結果、この「(3)増税で教育社会保障」オプションを採用し、他に何の手立ても講じなければ、デフレ脱却どころから「デフレ深刻化」も危惧される状況に至ります。

Next: 一番マシな消費増税「(4)増税でワイズスペンディング」の狙い

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