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「技術の日産」が抱える、リコール問題よりさらに大きな不安とは?=栫井駿介

自動車会社の存亡をかける研究開発

自動車業界は、景気変動だけではない様々なリスクを負っています。特に大きいのが研究開発費の高騰です。

世の中では、電気自動車や自動運転車に注目が集まっています。テスラやアップル、グーグルをはじめとする新規参入者も多く、各社は技術開発を急いでいます。結果として、研究開発費は各社ともに右肩上がりに伸びているのです。

もし他社に先駆けて素晴らしい技術が開発できたとしても、競争はそれだけでは終わりません。新たな技術を開発したら、それをなるべく多くの人に買ってもらい、シェアを一気に伸ばす必要があることから、価格設定は無理しがちです。

電気自動車のみを販売しているテスラがいまだに赤字であるように、まだガソリン車と同じレベルの価格で勝負できるコスト環境ではないでしょう。日産も「世界で最も売れている電気自動車」リーフを販売していますが、それを売っても利益にはつながっていないでしょう。

それでも、研究開発をやめるわけにはいきません。もし、世界が急速に電気自動車に舵を切るようなことがあれば、それまで全く開発を行っていなかった会社は完全に置いていかれてしまいます。研究開発は、自動車会社としての存亡をかけた戦いなのです。

このように、一見盛り上がっている業界は過当競争が起こりやすく、利益が残らないということも往々にしてあります。話題になっている業界こそ、注意が必要だと考えるゆえんです。

長期的な成長のためには中国が不可欠だが…

日産が景気に関係なく成長する可能性があるとすれば中国です。中国はいまや世界最大の自動車販売台数を誇り、少なくとも台数争いでは中国を制した企業が圧倒的に有利となります。

そこで優位性を発揮しているのが、ドイツのフォルクスワーゲンです。どこよりも早く中国に進出したこともあり、圧倒的なトップシェアを誇ります。

日産の中国における販売台数はフォルクスワーゲンの3分の1程度にすぎません。昨年中国全体の販売台数が13.2%伸びたのに対し、日産の伸び率は8.4%しかないなど、勢いにも欠けます。

また、海外の企業が中国で自動車を販売するには、現地との合弁会社を設立しなければなりません。つまり、稼いだ利益の半分は現地企業に流れてしまうわけです。

現在、日産の中国での売上高は10%程度にすぎません。業績に貢献するとしても、もうしばらく先の話になりそうです。

Next: 数値から安直に「割安株」と判断してはいけない典型的な例

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