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誰がメイド・イン・ジャパンを殺すのか? 日本が取り戻すべき経営の心=斎藤満

中国や韓国の後塵を拝する「守りの経営」の問題点

このようにして、人件費の節約が短期の企業収益を支援する一方、技術の蓄積、新規開発、設備投資が停滞し、守りの経営に傾く企業経営者が増えました。

しかも、外部から経営トップを招聘するケースも増え、「現場を知らないトップ」も増えました。かつては社員任せでも「わが社」という意識を持つ社員が経営層の信頼に応えていましたが、即戦力として外から中途採用され、あるいは派遣されてきた社員に同じ忠誠心を期待することはできません。

確かに、非正規雇用が4割にもなって、企業が負担する社会保険料も減り、企業が支払う人件費は、5年前も今もほとんど変わらず、つまりコストは抑制され、それが企業の経常利益8割増(法人企業統計)につながっています。同時に、その利益を技術開発、設備投資に回さずに、利益準備金という「内部留保」(つまり貯蓄)に積み上げてきました。

その結果、いつの間にかエレクトロニクス業界は韓国台湾に追い越され、技術供与した中国に脅かされ、自動車業界も、もはや中国が世界一の生産国に取って代わりました。電気自動車化が進むと、中国の優位性はさらに進み、日本国内のエンジン自動車向けの巨大ピラミッド構造が瓦解します。

「下請け」の日本にできるのはコストカットだけ

かつての本田宗一郎、松下幸之助、井深大氏など、現場を知る経営者なら時代の変化に対応できたでしょうが、現場から離れた経営者が、目先の利益優先の経営をしている間に、「ジャバン・アズ・ナンバー1」が、いつしか世界の企業に越され、1周遅れ、2周遅れとなるところも出てきました。

かつてのウォークマンや液晶といった、技術に裏付けられた独占的商品の創出が続かなくなり、最近ではもっぱら、アップル、アマゾン、グーグルなど米国企業に席巻され、日本はただの下請け製造部門になり下がるようになりました。利益の源泉は、スマイル・カーブの両脇、つまり新製品の開発か、独占的販売にあり、途中の下請け生産部門は薄利で儲かりません。

スマイル・カーブの両端で儲けるのが方やアップルやグーグル、かたやローレックス、ベンツ、シャネルなどで、日本や中国企業は下請け生産部門を担う形になっているものが多くなりました。そこでは徹底的にコストカットして大量生産で効率化するしかありません。反面、カーブの両端企業は独占的利益で大きなマージンをとれます。

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