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トランプの大統領令、真の狙い。そして中国が中東全域を制覇する=高島康司

トランプと国家情報局・CIAの熾烈な戦い

実はこのような大統領令は、トランプ政権と、国家情報局、ならびにCIAとの熾烈を極めた戦いの一側面を表している。

周知のように、国家情報局とそれが監督するCIAは、トランプの当選が決まった昨年の11月8日以降も、民主党全国本部のサーバがロシアによってハッキングされたとして、トランプの勝利がロシアの介入によってもたらされたものであると印象づけるキャンペーンを実施していた。そして、これを全面的に否定するトランプとの間で、熾烈な戦いが展開していた。

ロシアによるハッキング問題は報道もされなくなったが、トランプと国家情報局、ならびにCIAとの戦いは水面下で継続している。国家情報長官をNSCから排除した今回の大統領令は、国家情報局とCIAに対するトランプ側からの報復としての側面がある。

本質は「CIAによる海外工作の否定」

しかし、NSCからの国家情報局の排除は報復のためだけなのだろうか?実はこれにはもっと本質的な理由がある。

このメルマガの読者であれば周知だろうが、これまでアメリカは自国に有利な国際環境を形成したり、アメリカにとって都合の悪い政権を倒す工作を実施してきた長い歴史がある。

特に2003年のイラク侵略戦争に失敗してからは、コストのかかる戦争に代わって、各国で民主化要求運動を盛り上げて政権を内部から崩壊させ、アメリカに都合のよい政権の樹立を後押ししてきた。

また、同じ手法を使って混乱を拡大し、アメリカが望む国際的な環境の形成を行ってきた。

2000年のユーゴスラビアのブルドーザー革命に始まり、2005年までにかけてグルジア、ウクライナ、キルギスなどの旧ソビエト共和国の親ロシア派政権を民主化要求運動で打倒したカラー革命や、2010年に始まり中東全域に拡散したアラブの春、さらに2011年から始まったシリアの内戦、そして2014年に激化したウクライナ内戦などは、みなこうした手口を通して、アメリカが深く関与して引き起こしたことはすでに明白だ。

こうした民主化要求運動は、米国務省の配下にあるNGOが資金を提供して支援し、ベオグラードに本部があるCANVASという組織が運動のノウハウをトレーニングするという方法で拡大した。

著名投資家ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティーや、自動車メーカのフォードが資金を提供するフォード財団などは、こうしたNGOの代表的な例だ。さらに、CIAの実質的な配下にあるアメリカ開発援助庁も、資金の支援では非常に大きな役割を果たしている。

そして、こうした民主化要求運動による政権転覆のオペレーション全体を指揮し、監督しているのはCIAなのである。

さらにCIAはイラク駐留米軍と一緒に、2007年頃から、イラクでイラン系のシーア派武装集団に対抗する必要から、スンニー派の原理主義組織「IS」の結成と訓練に関与し資金を提供した。

ISには、トルコとサウジアラビア、さらにカタールも資金を提供している。ISは、欧米が敵視するシリアのアサド政権を打倒する格好の道具として使われた。

「海外から手を引く」トランプの公約とも一貫

このようなCIAが海外で行ってきた工作の経緯を背景にすると、トランプ政権がNSC(国家安全保障会議)からCIAの上位組織である国家情報局を排除したことの意味が見えてくる。

つまり、CIAのような米情報機関が主導する海外の工作から一切手を引くという宣言なのである。米軍を統括する統合参謀本部も排除されたのは、米軍がCIAのオペレーションに深く関与していたからではないかと思われる。

これは、「他国の国家建設にはかかわらない」とするトランプの公約と一貫している。

Next: アメリカが撤退した後の中東全域を中国とロシアが制覇する

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