まだまったく立ち上がらないアメリカでのビジネス
アメリカでの累計ダウンロード数が3,700万となっていますが、日本で累計ダウンロード数が3,300万であった2016年6月頃を見ると、流通総額が四半期当たり390億円程度となっています。ですので、ダウンロードあたりの流通総額への貢献で見ると、アメリカの方が約6倍~7倍ほど効率が悪いことがよく分かります。
前述の通り、C2Cのフリマビジネスはネットワーク外部性が大きく働くビジネスになっています。
単純計算でアメリカは日本よりも3倍以上人口が多いため、同じだけのネットワーク外部性を働かせるには、少なくても日本の3倍程度のMAUが必要だという計算になります。
また物価の違いも大きな要因になります。広告費が日本よりもずっと高いだけではなく、日本のテレビCMのように国内すべてに広くリーチする広告手段もなく、また人件費ベースで考えるとシリコンバレーでの人件費は日本の少なくても2倍~3倍程度は必要になります。
一方で、絶好調な日本でのビジネス
今回の目論見書では、連結での決算と単体(つまり日本法人)の決算が両方開示されていたので、比較をしてみました。
こうして見ると、日本においては経常利益ベースで年間約45億円もの利益を上げていながら、アメリカにおいて約72億円の損失を出している計算になります。
日本でも、メルペイなど新しい事業を立ち上げていくという計画が既に発表されていますが、年間80%も成長しており、経常利益が45億円も出ているのであれば、株式上場という大きなコストを払ってまで資金調達をする必要もないかもしれない、と思ってしまうのが、一般的な見方ではないでしょうか。
また、メルカリのバランスシートを見ると、現時点で現金が約536円億円あります。売買代金の未払い分などを考慮して、単純に流動資産から流動負債を引くと、それでも約200億円程度のネットの現金(相当)があることになります。
つまりこれだけ絶好調な日本でのビジネスを見る限りにおいて、「日本の国内市場において多角化をしていくだけであれば、少なくてもこのタイミングで株式上場をする必要は無かった」とも言えるでしょう。