「聞く力」は多くの人が思っているよりはるかに偉大だ。そしてこの力を持つ人はほとんどいない。折りたたみ傘の売上を3倍に引き上げた事例をもとに解説する。(『野口敏の会話がとぎれても大丈夫』)
※本記事は有料メルマガ『野口敏の会話がとぎれても大丈夫』2018年6月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:野口敏(のぐち さとし)
コミュニケーションのスペシャリスト。株式会社グッドコミュニケーション代表取締役。著書にシリーズ100万部超のベストセラー『誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方66のルール』など。大手企業の社員教育、人材を育てる力のあるリーダー養成など幅広い講演活動も精力的にこなす。
「お客様の立場で考える」言うのは簡単だが、全力で実践すると…
本当の消費者目線とは?
話を聞くとは、相手になりきってその気持ちを感じる力のこと。この力が強ければ、ビジネスで新しい商品・サービスを開発する力も強くなる。
ビジネスのタネは、人の困ったところ、不便なところ、寂しいところに落ちているものだ。自分の商品・サービスを使う人の気持ちになって見てみる。消費者側からその商品やサービスを見る力を養う。
言葉では簡単だが、製作者側・サービスの提供者側になると、知識も経験も豊富なあまり、ものの見方が偏りがちになるもの。
「この技術は他社では決してマネできない素晴らしいものだ。しかしうちの商品は売上げが伸びない」…。そんな時は、製作者側の論理でものを作っているケースが多いもの。
本当の聞く力をマスターした人は、相手の身になる力が飛躍的に伸びるので、それまで見えなかったものが見えるようになる。
ものすごく小さくたためる傘が売れない
この話は十年以上昔のお話。
私の生徒は折りたたみ傘を製造する会社の経営者。彼はすごく小さくたためる傘を作っていて、国内最小を目指していた。でも、売上げは伸びない。
売り場を見に行ってもお客は興味を示して手を伸ばすが、購入するのは他のメーカーの傘。
彼はいつも消費者の立場になって考えていると言っていたが、聞く力をマスターして、「相手の立場になるとは相手そのものになること」「相手の目から見たように感じること」ということを実践してみたそうだ。
雨の日に自社の傘をさして駅に向かい電車に乗ってみた。すると自社の傘は小さくたためるのはいいのだけれど、折り畳むのに手間がかかるところが難点だと気づいた。
さらに利用者は出勤時には歩きながら、また階段を降りながら傘をケースに収めるものだといまさらながら気づいたそうだ。
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