ユニクロの勝機と障壁
本気を出してしまえば、ユニクロに有利と思われる部分が多くあります。
まず、ユニクロの知名度です。ベーシックな商品に関しては、いいものをそれなりに安く買える場所として多くの人に認知されています。どんな商品が届くかだいたい見当がつくため、ネットで注文することにも抵抗がないでしょう。
いざとなったら全国に店舗網があることも大きな強みになります。ネットで迷ったら、すぐにお店に行って手に取り確認できます。サイズに関しても、試着できるので特に問題は起きないでしょう。店舗への配送網を使えば、配達のコストも削減できます。
ZOZOとの最大の違いは、ユニクロの製造能力です。いい製品を安く作るためには、今や世界中の最適な場所で製造するサプライチェーンの構築が欠かせません。ユニクロは、すでに世界トップレベルのサプライチェーンを築いています。ZOZOのPBと比べると、大人と生まれたての赤ちゃんほどの違いがあるでしょう。
一方で、これまでの成功体験がイノベーションの妨げとなることもあります。硬派に商品の品質を磨き続けてきたユニクロでは、ZOZOSUITのような商品の発想は生まれにくいかもしれません。日々進化を遂げるインターネットの世界では、最初からオンライン販売に特化していたZOZOに一日の長があります。
柳井社長は、ZOZOSUITを「おもちゃ」と言ってこき下ろしています。一方、ZOZOの前澤社長は、「競争は嫌い」と言って、ユニクロとの比較を避けたがります。お互いがお互いを遠ざける姿勢は、もしかすると強く意識していることの裏返しなのかもしれません。
割高な指標は成長性への期待のあらわれ
それでは、株式への投資についてはどうでしょうか。投資指標を比較してみましょう。

出典:Yahoo!ファイナンス(株価指標は2018年9月22日時点)
PERやPBRの数字を見ると、いずれも東証平均の15.2倍、1.3倍(2018年8月時点)と比べてかなり割高な水準になっていることがわかります。裏を返せば、両社ともにそれだけ高い成長が期待されているということです。
実際に、それを期待させるだけの成長を遂げてきたことから、単に割高だと切り捨てることもできないでしょう。成長が続くのであれば、多少数値が高くてもやがて利益が追いついてきます。
共通して言えるのは、どちらもキャラクターの強い社長が会社を引っ張っているということです。良くも悪くも、社長の判断が会社の方向性を決めると言って差し支えないでしょう。これからも彼らの言動から目が離せません。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年9月25日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。