イギリスの中央銀行であるイングランド銀行の主席エコノミストがマイナス金利の必要性に言及し「1つの手法として、ビットコインのような電子通貨が良いのではないか」と述べました。マイナス金利だけでも異常事態なのに、ここでビットコインが出てくるのはなぜ?メルマガ『いつも感謝している高年の独り言』が解説します。
「ビットコインのような電子通貨が良いのでは」英中銀エコノミスト
イングランド銀行の主席エコノミストAndy Haldane氏が「次の大恐慌から英国経済を守るにはマイナス金利にしなければならない」と言明しました。テレグラフ報道です。
報道のポイント
★イングランド銀行の主席エコノミストAndy Haldane氏は、次の大恐慌を防ぐには金利をさらにマイナス金利にし、インフレターゲットを上げて、さらに現金をなくすべきだと示唆した。
★英国のインフレはこの2年間ずっと横這いで伸びず、ダウンサイドリスクもあり、英国の経済成長、インフレ目標を達成するためには金融緩和を進める必要がある。つまりゼロ金利よりもさらに進めてマイナス金利を示唆したのだ。
マイナス金利にすると銀行預金は減るばかりとなり、そうなると国民は預金を銀行から引き出して現金をタンス預金に仕舞い込む。すると銀行は企業に貸し付ける資金が少なくなるため、貸し出しを控え、景気は冷え込む。
この主席エコノミストは「1つの手法として、ビットコインのような電子通貨が良いのではないか」と語った。
★英国はインフレターゲットを現在の2%から4%に上げたいのだ。この不況と闘うには、もっとインフレにする必要があると言うのだ。
★今まで、世界各国の中央銀行は金利を引き下げて景気を刺激してきたのだが、その弾薬も尽きてきた。主要先進国では、公的金利は実質的にゼロとなっている。英国ではもう6年以上金利は0.5%のままだ。
全世界の中央銀行が同じようなことを考えている
簡単に言えば、銀行の貸し出し金利と資金調達コスト(預金金利)の差が銀行の利益。貸出金利を例えば0.5%にしても、現在のような不況では企業が成長意欲を失い、設備拡大に消極的となります。
銀行自身も貸し出す相手が倒産する可能性を考えてしまい、積極的には動けないものです。そんな状況では金融当局は市場に流動性を与えて、積極的な投資活動を促進させたいと考えます。
となると、預金金利をマイナスにして貸し出し金利を本当にゼロにする誘惑に駆られます。実際に預金金利がマイナスになると、預金者は毎月預金が減るのですから、大事な預金を引き出して自宅のタンスに現金を押し込む事となります。
これを防ぐには現金紙幣、貨幣をなくす以外に方法はない――ということで、このような話となります。
(ア)はこの記事のベースとなった9月18日の講演内容の一部。写真の人物は、講演者の主席エコノミストのAndy Haldane氏です。
この講演内容で散見される“ZLB問題”とは「Zero Lower Bound」すなわち「ゼロ金利制約」。つまりFFレート等の中央銀行金利をゼロ金利より下げることができないと言う問題です。
この中では、上記テレグラフ報道には出てこない色々なアイデアを提案しています。電子マネーと現金紙幣の交換比率を変化させるようなことも考えています。例えば電子マネーの1000円は1000円として使用できるが、現金に交換する場合、現金紙幣税として50円を没収し950円を渡すようなことです。そうなると人々は電子マネーで保管しタンス預金を避けるというような案です。
(イ)は全世界の主要な中央銀行レートのリスト。黄色枠はゼロ金利(実際にはゼロではなく、ゼロ付近金利ですが)の国々、赤色枠はマイナス金利の国です。
※太字はMONEY VOICE編集部による