modest(モデスト)・moderate(モデレート)・robust(ロウバスト)が何を意味するかわかりますか?実は、これらの言葉からすぐに景気を連想できるようになるのです。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2018年11月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
ニュースを素早く理解する「景気表現」の正しい読み解き方とは?
景気の変化を素早く感じ取ることができる3つの単語
新卒時、最初に外国債券部外国商品課なんて聞いても「は?」となる部署に配属されて以来、仕方なく英語と向き合う日々が今日まで続いています。学生の頃から英語と国語が苦手だったもので、今でも英語が目の前にあるなんて不思議な感覚です。ましてや何年もこんな文章ながら書き続けているなんて奇跡です。
ちなみに、英語・国語のアレルギーがある程度緩和されたのはどちらも30代に入ってからでした。ほぼ仕事の現場で鍛えられたものです。そんな私なので、英語を見聞きしても頭にスッと入って来ない単語ばかり。それでも市場・経済関連の文章を見て嫌でも覚えさせられた3つの強弱を示す単語があります。
modest(モデスト)・moderate(モデレート)・robust(ロウバスト)がその3つです。
modestは「控えめ・ちょっと」、moderateは「適度・穏やか」、robustは「がっしり・力強い」です。この3つ、ホントよく出てきます。強さの加減を示すものなので、
modest<moderate<robust
と順番に覚えておけば、前回公表された文書との比較にも役立ちます。例えば「景気はmodest」から「景気はmoderate」といった具体に表現が変われば、景気判断が「上方修正された」と考えることが可能です。Fed(Federal Reserve:米連銀)が出すベージュブックもこれらの言葉が判断の頼りになります。
「持ち直し」という表現の捉え方に注意が必要
11月8日に出たFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)声明文でもmoderateが出てきました。
設備投資の件に“moderated from its rapid pace”とあります。「速いペースから適度に(減速)」てなところです。rapid(ラピッド)は快速電車の名前にもあったように「速い」です。
FOMCでは、消費や経済活動そのもの等には「強い(strong)」という中学生単語を今回も使いました。全体が明確に強いのならば、利上げも継続です。このまま行けば12月18-19日開催のFOMCで0.25%の利上げが実施されるのではないでしょうか。
換言すれば、経済活動がmoderateになってきたら利上げ打ち止め、modestになれば「次は利下げかも」となってきます。
日本の経済指標に出て来る「持ち直し」もそうですけど、言葉の意味をそのまま捉えるより、強さの程度を示す表現として受け止めるのが適切です。あくまで私の感覚ですが、「持ち直し」とmoderateが同じような意味合いかと。
よく新聞記事や金融機関のレポート等にて、役所が出す「持ち直し」をそのまま「以前よりも改善している」という体で「設備稼働は持ち直した」と説明している文章を見掛けます。
しかし、それは間違い、少なくとも読者を誤解させる表現です。6ヶ月連続「持ち直し」が使われていて、毎回「改善している」という意味だったらそれは「持ち直し」じゃなくて「強い」はずです。6ヶ月連続「持ち直し」ということは、6ヶ月連続「まぁまぁ」という意味になります。
この誤解、何年も経済指標やレポートを追い続けているエコノミストほど気付かないものです。ご注意ください。
<今回のまとめ>
・FOMC、設備投資「moderated(穏やか)」になったと
・消費や景気そのものは「strong(強い)」ので、12月に利上げするのでは
・modest・moderate・robust、経済の強弱を示す単語として覚えておくと便利です
<初月無料購読ですぐ読める! 11月配信済みバックナンバー>
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2018年11月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込864円)。
- トランプが株安をツイート(10/31)
- 「追証を解消する方法」が届きました(10/30)
- 投信販売強化の記事、銀行株買いの基準にも(10/29)
- 「もっと」がしぼむ(10/26)
- 「怖さ」を考えてみます(10/25)
- 「〇×ショック」が出て来ない(10/24)
- トランプの都知事化(10/23)
- 海外観光客が示す円安基調(10/22)
- 暗示に掛かり難い相場(10/19)
- 恒常的なFedと市場との乖離(10/18)
- 半値・61.8%戻しが飛び交う買戻し(10/17)
- ロイター記事で気付く自然な相場への回帰(10/16)
- ニヒルな日本金融市場(10/15)
- 恐怖の源が見えてきた(10/12)
- 米金利上昇が株下落に繋がり(10/11)
- 「株と為替」だけじゃなく(10/10)
- 賑わうところ、割を食うところ(10/9)
- 決戦は金曜日(10/5)
- 「久しぶり」の金利水準と市場の落ち着き(10/4)
- 「10月がピーク」を示唆するあれこれ(10/3)
- 市況における枕詞(10/2)
- 二国間交渉発、株高行き(10/1)
- 安倍総裁「圧勝」による「疑似」踏み上げへの期待(9/20)
- 米国債の落ち着きに視点は移る(9/19)
- 気が付けば踏み上げ(9/18)
- 日経平均、「上抜けするなら今日でしょ」(9/14)
- 新型iPhoneに思うこと(9/13)
- 横綱の座が危うくみえる日銀(9/12)
- 買って相場が上がったのに損が出る(9/11)
- 早合点や希望的観測(9/10)
- 「何時でもカツアゲ」対象の日本(9/7)
- ご無事を願います(9/6)
- 「強い」米経済、悪影響は「待つ」(9/5)
- たまには算数でも(9/4)
- 「やっちまった」と認めること(9/3)
- 9月、一旦深呼吸(8/31)
- トランプ発言に右往左往するよりも(8/30)
- 大阪、魅力向上中(8/29)
- 海外頼みとは言いたくないものの(8/28)
- パウエル議長による、ルール変更のすすめ(8/27)
- 「10周年」が増えて来る季節(8/24)
- ビットコインETF、却下されました(8/23)
- パウエル講演気になるものの(8/22)
- 米石油、代替手段に埋蔵金(8/21)
- イナゴばかりじゃ…(8/20)
- ニジマスでもサーモン、50兆円でも80兆円(8/17)
- 日銀は前場には動かないのでしょうか(8/16)
- 情熱の薔薇を咲かせるには(8/15)
- トルコ問題の調査でお困りの方に(8/14)
- 日米通商協議というオバケ(8/13)
- スタンドの涙踊りと旧態依然とした企業(8/10)
- 何言っても合っている日本経済(8/9)
- 米国債、15日の償還・利払い前に…(8/8)
- 金価格高騰の国もありますが(8/7)
- サマータイム、医療関連株でも物色しますか(8/6)
- 突飛さだけではない、政治のリスク(8/3)
- 不安な割に損が拡大しない「坊や」たち(8/2)
- 「いいひと。」ネイサン(8/1)
2018年7月配信分
・「曖昧過ぎる」日銀(7/31)
・「お客様は神様です」という弱点(7/30)
・第三の矢「ガイアツ」(7/27)
・FANGに振り回されるだけ(7/26)
・朝三暮四(7/25)
・「金利上げちゃダメ」により金利上昇(7/24)
・「黒田タンカー」(7/23)
・政治の緊張感欠如が生む酷い相場(7/20)
・官製相場の限界をみているのかも(7/19)
・貿易戦争でも利上げは続く(7/18)
・錯覚してしまいます(7/17)
・米国、服はお安く(7/13)
・「識者」と市場のズレ(7/12)
・過熱感とトランプ(7/11)
・買戻し一巡のサイン(7/10)
・自律反発でしょうか(7/9)
・原油高懸念が各方面から(7/6)
・「売れる投信は、売りやすいから」(7/5)
・6日までは我慢でしょうか(7/4)
・損切りを遅らせるだけ、日銀の株ETF買い(7/3)
・短観、慎重なのも仕方ないけど(7/2)
→ 2018年7月のバックナンバーを購入する
2018年6月配信分
・もう梅雨明け(6/29)
・コスト転嫁の可否と国のB/S(6/28)
・下がり難くなる変動率(6/27)
・あみんじゃないのよハーレーは(6/26)
・日銀審議委員さま、銀行員研修を勧めます(6/25)
・心理悪化よりカネ余り(6/22)
・NYダウに制裁?(6/21)
・銀行強盗と仮想通貨のハッキング(6/20)
・想定通りのシナリオ、想定外の値動き(6/19)
・時間切れ、かも(6/18)
・ECB、市場に「僕は嫌だ」とは言わせない(6/15)
・Fedとドルと30年債(6/14)
・解像度の進歩に驚く米朝首脳会談(6/13)
・米朝首脳会談、何に期待しますか(6/12)
・何処でも元気にツイートです(6/11)
・投資家、債券知るべし(6/8)
・「骨太の方針」と国債(6/7)
・相場も梅雨入り(6/6)
・いつになったら海外投資家は(6/5)
・トランプ好みのデータと市場(6/4)
・豊洲の画像と売り仕掛け(6/1)
→ 2018年6月のバックナンバーを購入する
2018年5月配信分
・芸能人とIT企業社長のゴシップと市場(5/31)
・100万円の2年定期、いきなり「97万円でーす」(5/30)
・歴史は長めに(5/29)
・新興国、インフレ・財政・政治の安定(5/28)
・「金妻」と『バブルへGO』(5/25)
・関学QBに#metoo(5/24)
・ビットコインとポテト(5/23)
・株の参考に2組の金利(5/22)
・人民日報英語版の勧め(5/21)
・「マルキュー」、どう発音しますか(5/18)
・同じ相場でも異なる表現(5/17)
・GDP、どうやって好景気を実感しろと(5/16)
・地政学リスクが株価を支える(5/15)
・北朝鮮の潜在的な力って…(5/14)
・久しぶりの(5/11)
・安倍さん三選、株買いですか(5/10)
・ヘッジファンド盛り返し(5/9)
・ガソリンスタンドの看板を気にする(5/8)
・誤解に対する誤解(5/7)
・米製造業に陰り(5/2)
・瀬戸内捕物帳に思う(5/1)
→ 2018年5月のバックナンバーを購入する
2018年4月配信分
・求む「嘘のプロ」(4/27)
・新入社員の傾向今昔(4/26)
・「鉄人」不在(4/25)
・ドル買戻し「もういっかい」(4/24)
・ムーンウォークな動き(4/23)
・CPIで「営業トーク」(4/20)
・原油は買われ、逆イールドが視野に(4/19)
・バーバラさんからの贈り物(4/18)
・マラソンも政治経済も市場も(4/17)
・等加速度運動に置いてけぼり(4/16)
・ロシアにケチ付け、ロシアを利する(4/13)
・チョッピーな動きに評価損増えやすく(4/12)
・政治の停滞が市場価格に反映されつつ(4/11)
・習近平に見せつけられる(4/10)
・目先の値動き、大人しくなるのでは(4/9)
・トランプと半沢直樹との違い(4/6)
・報復関税と豚さん(4/5)
・強で売って甘で買う(4/4)
・株安と支持率上昇(4/3)
・インバウンド需要も一極集中(4/2)
→ 2018年4月のバックナンバーを購入する
2018年3月配信分
・転換点は来月半ば以降でしょうか(3/30)
・スローパンクチャーな昨日今日(3/29)
・検索しても日本が出てきません(3/28)
・証人喚問、警戒すべきは…(3/27)
・アフリカンシンフォニーも良いけれど(3/26)
・「理論値」には大らかに(3/23)
・FOMCへの複雑な反応(3/22)
・金利、3つの要素(3/20)
・1,000兆円の根雪(3/19)
・アベさんのいない世界(3/16)
・財務省の強かな管理、なのに…(3/15)
・クビ差アタマ差、爪噛む相場(3/14)
・扱いが小さい日本(3/13)
・森友問題とアベノミクスの因果関係(3/12)
・アベクロよりアバクロ(3/9)
・処分売り、峠を越したのでは(3/8)
・ニュースよりチャート(3/7)
・切らされるばかり(3/6)
・円高エイリアン(3/5)
・決算対策の季節(3/2)
・黒田総裁のやる気度(3/1)
→ 2018年3月のバックナンバーを購入する
『高梨彰『しん・古今東西』』(2018年11月9日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
高梨彰『しん・古今東西』
[月額880円(税込) 毎週月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
チーフストラテジストとして、年200回ほど発行していたメルマガ『古今東西』が、『しん・古今東西』としてここにリニューアル。株・債券・為替などの金融市場全般から、マクロ経済、市場心理など、「これ何?」なことを徒然なるままにお伝えします。四方山話も合わせ気軽に読めて、しかも相場を「自分で判断出来る」ようになるメルマガです。是非一度お試し下さい。