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惨敗を回避した米中間選挙、トランプ政策に現れる変化と日本経済への悪影響は?=吉田繁治

上院の死守でトランプ弾劾はぎりぎり回避

中間選挙で、民主党が多数派になり、大統領の弾劾決議をする可能性が高まっています。ロシアゲートだけではなく、脱税・セックスなどのスキャンダルがあります。クリントン大統領がモニカ・ルインスキーとの「大統領室での不適切な関係の偽証」から弾劾を受けたことが小さく見えますね。

米国の二院制度では、下院で大統領の弾劾決議が成立しても、共和党が、微差の多数派を維持した上院の2/3の賛成での弾劾裁判が必要です。上院で弾劾が評決されると、副大統領のマイク・ペンスが大統領になって、残り任期を務めます。

大統領が起案する予算案と法案でも、上院の3/5の賛成が必要です。単に、国民からの支持率ではなく、上院の任期6年のエリート層が動かす政治の仕組みが米国の制度です。

<下院:民主党が多数派を奪還>

2年ごとの中間選挙で435人の全議員が改選された下院(任期2年)では、事前の世論調査での反トランプは55%くらいと多かったので、共和党は多数派を失うと予想されていました。結果は、民主党223、共和党199、未定13で、民主党が多数派を奪回しています。

<上院:共和党が多数派を維持>

定数が100の上院(任期6年)の改選数は、35人でした。共和党の改選が8人、6年前に勝った民主党は27人と多かった。米国の国会議員では、現職の当選率が約90%と高い。共和党の51:49の多数派は維持できると見られていました。結果は、共和党51、民主党46、未定3で、共和党が多数派を維持しました。

下院の弾劾決議と、上院の弾劾裁判を恐れていたトランプは、「上院で多数派を維持すること」に精力を注いだ遊説日程を組んでいました。このため、上院での多数派を、トランプは「大きな勝利」としています

民主党が多数派をとる予想だった下院では、弾劾決議が予定されていたので、上院の35人の改選が2年目の大統領選挙になっていたのです。

野党から「7名」取り込まないと予算も法案も通らない

予算案や法案も、上院の3/5の賛成がないと通りません(弾劾裁判の有効化に必要な2/3の賛成よりは少ない)。大統領の強い権限を制限するために設けられた、米国の制度です。

国際経済での、最大の懸案になっているトランプ関税の大統領令については、発動の手続きについて、上院が過半数の賛成で関与する決議がすでに通っています。大統領は、関税発動の権限をもちますが(通商法232条)、その命令権に制限を加えるものです(賛成88:反対11)。

仮に上院が共和党53、民主党47議席で決定すると、3/5は60名ですから、民主党から7名の議員を取り込むことができないと、予算案や法案が通りません。米国の政党には、自民党のような「党議拘束」はなく、比較的自由に、個人の立場で賛否を示し、法案も提出します。

それでも、民主党では選挙・脱税・セックスなどスキャンダルまみれのトランプへの強い反対の勢いが増しているので、取り込みは難しいでしょう。

今回の、「上院で微差の多数派、下院では少数派」という選挙結果から、2012年までの日本の「衆参ねじれ国会」のように、「重要な予算案、法案が通らない事態」が頻発することが予想されます。世論を作る大手メディアは、もともと反トランプです。トランプは、CNNはフェイクを流すと応じています。

セッションズ司法長官を解任は、以上のような選挙結果と米国特有の議会制度を背景にして、発令されています。

Next: 中間選挙は「トランプの惨敗を避けられた」との評価が妥当。政策に変化は?

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