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日本人は生産性が低すぎる? 賃金が上がらず、人手不足倒産が急増する元凶とは=斎藤満

原因は低い生産性の伸び

日本は先進国には珍しく、生産性統計が整備されていません。そこで、「日本株式会社」の総所得に当たる名目GDP(国内総生産)と、これを生み出すのに費やされた就業者数を見てみましょう。

2017年度は6,566万人の就業者によって548.6兆円が産み出されていて、1人当たりでは835.5万円を産み出しました

同様に、2016年度は6,479万人で539.4兆円を、2005年度は6,365万人で525.7兆円を、2000年度は6,453万人で528.5兆円を産出しています。

就業者1人当たりでは16年度が832.5万円、2005年度が828.6万円、2000年度は819.0万円になります。この所得を企業と就業者とで分かち合い、それぞれが税金を国に納めます。

名目所得で見た労働生産性上昇率は直近1年で0.4%ですが、2005年度、2000年度から見ると、いずれも年率0.1%の低い上昇率となっています。

これは労働者の働きが悪かっただけではなく、原油高など、海外からの輸入コストが高まって、企業の採算が悪化したことも影響しています。このため、実質値でみた生産性の伸びは、順に0.3%、年率0.4%、同0.7%の上昇となります。

賃上げできない事情

賃金の上昇は原則生産性上昇に応じてなされ、その範囲内であれば企業の利益が増え、生産性を超えて賃上げすれば、企業の利益が減り、価格に転嫁せざるを得なくなります。

価格転嫁して売り上げや収益が悪化するとすれば、それもかなわず、企業は賃金を抑えるか、より低コストの非正規雇用にシフトします。

経済理論上は、実質値でみた労働生産性上昇の範囲で賃上げがなされれば単位労働コストは高まらず、企業の負担にはならないのですが、輸入コストが高まって採算が悪化しているため、実際には名目所得で見た低い生産性に縛られます。それ以上に賃上げすれば、企業の取り分が減ります。

低い生産性が低賃金をもたらす

現実には企業が最高益を更新するほど利益を拡大し、労働分配率が低下しています。これは、企業が賃金上昇を低く抑えているだけでなく、正社員を雇うよりもコストが3分の1で済む非正規雇用を増やし、彼らが全体の4割近くになったことで、企業の人件費か低く抑えられ、企業の利益が拡大しました。つまり、低い生産性が低賃金をもたらしています

さらに、生産性が例えば5%も上がれば、企業の売り上げ、生産計画が5%増えても、労働力を追加する必要はないのですが、生産性がほとんど上がらないので、少しでも売り上げや生産を増やそうとすると、労働力の追加が必要になります。運輸や建設でまずこれに直面し、流通でもこれに追い込まれました。

つまり、労働生産性が上がらないことが、人手不足を加速させる要因にもなっています

従って、人手不足と低賃金の原因はともに低い生産性上昇に原因があり、だからこそ人手不足でも賃金が上がらないのです。

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