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伊藤忠はなぜデサントを敵対的TOBするのか?発表IRから読み取る、その理由とは

<経営体制刷新のための取締役選任議案>

・伊藤忠らは、対象者の経営体制の見直しにあたって、TOB終了後に対象者と協議を行うことを予定しており、対象者との協議が整わなかった場合には、TOBの結果も踏まえ、対象者の経営体制の刷新のため、取締役選任に関する議案等を、本年6月に開催される予定の定時株主総会において提案する可能性がある

<伊藤忠出身の取締役等>

・伊藤忠から1985年に派遣された飯田洋三氏が1994年6月に対象者の代表取締役社長に就任して以降、2013年6月まで伊藤忠出身者が対象者の代表取締役を務め、この間、伊藤忠と対象者は信頼関係を深めていた

・2013/2/26の取締役会において、伊藤忠から派遣されていた取締役らには事前に何らの連絡もなく、石本雅敏氏(当時常務取締役)の社長昇格について決議がなされた

・なお、現在の対象者の取締役である、石本雅敏氏(現代表取締役社長)、田中嘉一氏(現取締役専務執行役員)、三井久氏(現取締役常務執行役員)、羽田仁氏(現取締役常務執行役員)及び辻本謙一氏(現取締役常務執行役員)は、2013年当時より継続して取締役を務めている

・2013年6月に石本雅敏氏が対象者の代表取締役社長となって以降、伊藤忠から派遣する対象者の取締役は代表権を持たない取締役会長及び非常勤の取締役に留まり、対象者出身の取締役中心の経営体制となってから5年超が経過

・この間、石本雅敏氏が代表取締役社長となる直前の2013年3月期と直近の2018年3月期の対象者の業績を比較すると、連結ベースの業績で、売上高で約1.5倍、営業利益で約1.8倍、経常利益で約1.7倍まで拡大しており、業績面では一定の成果を残してきたと考えられる一方、これは主に2013/3期~2016/3期までの韓国事業の収益拡大に拠るところが大きい

・そのため、伊藤忠から派遣されている非常勤の取締役からは、2016年3月期までの間に十分な成長を遂げてきた韓国事業に過度な成長期待をかけずに日本及びその他のエリア(特に中国)での収益拡大に取り組むべきであるという事業戦略に関する問題提起を行うとともに事業方針の見直しの検討を求めていた

・しかしながら、かかる要請について真摯に検討する姿勢が見られず、伊藤忠グループとの事業面での協働も少なくなり、伊藤忠から派遣されている非常勤の取締役に対しても、取締役会において取締役として意見を述べるに当たっての最低限の情報のみが共有されるという事態に陥っている

・対象者の業績が韓国事業に過度に依存している状況において、韓国事業の市況低迷に起因して業績見通しが悪化したことで、伊藤忠としては対象者の企業価値が毀損する虞が増したと判断せざるを得なくなったことを受けて、2018年6月に改めて事業戦略に関する問題提起や方針の見直し、改善策の検討、実施を強く要請したものの、対象者の経営陣において真摯に検討する姿勢が見られなかったため、対象者の経営陣に危機意識を持たせ、伊藤忠からの指摘に対して真摯に対応することを期待し、2018年7月~10月にかけて対象者株式の買い増しを行った

<株式の買い増し>

2018年7月 769,300株/1,975円/株(議決権の26.56%を保有)
2018年8月  130万株/1,944円/株(同28.28%)
2018年10月 165万株/2,411円/株(同30.46%)

・しかしながら、伊藤忠の指摘に対して経営陣から明確な回答が示されることはなく、また、2018/8/30には、伊藤忠商事から派遣されている非常勤の取締役に事前に何らの連絡や説明もなく、ワコールとの包括的業務提携契約の締結に関する議題が緊急動議として取締役会に付議されるなど、対象者の成長戦略及び施策について伊藤忠らと対象者とが建設的に協議を行える関係ではなくなってしまっている

・伊藤忠らとしては、現在の対象者は、以下に挙げる経営上の問題を抱えていると考えており、対象者の経営体制に大きな懸念を抱いている

Next: 伊藤忠がデサントに抱く、3つの懸念とは?

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