必ずしも民主主義を尊重しない米国。「本音」は資金配分に表れる
何年か前のアラブの春をご記憶だろうか?エジプトでは民主的な選挙が行われ、モルシ大統領が選ばれたが、軍事クーデターにより投獄、死刑判決が下された。その軍事政権を米国は支援し支えている。
ISテロを「文明の衝突」や、宗教対立、独裁と民主主義との対立と捉える人も多いが、米国の軍事支援金の配分を見る限り、どれも整合性がない。
米国は選挙で選ばれた首長を軍事クーデターで倒した今のウクライナ政府を支持している。同様に、選挙で選ばれた首長を軍事クーデターで倒したエジプトの軍事政権に軍事支援を続けている。
これは米国の思い通りにならなかったイラクのフセイン政権や、アフガニスタンのタリバン政権を排し、傀儡政権を作ったのと同じ流れだ。
米国にとっては、シーア派、スンニ派など問題ではない。適当に対立してくれている方が、イスラエルにも好都合だ。
米国は必ずしも民主主義を尊重してはいない。民主主義は米国議会を見ても分かるように、思ったように物事を進めるには面倒なシステムだからだ。自国内はともかく、他国を思うように従わせるには、軍事政権は何かと好都合なのだ。ここには、文明も宗教も、政治体制の理想や理念もない。
私には安倍首相の思惑が分からない。ましてや、米国の思惑など分からない。しかし、資金という「力」の配分をどのように振り分けているかを見ることで、思惑を超えた事情が見え、どういう結果になるかが概ね見えてくる。
一方、欧州主要国のいつくかは旧宗主国として、アジア、アフリカ諸国に大なり小なりの関与を続けており、現地での反発を買っているケースも見られる。
ISテロの根本的な問題は、「欧米の中東政策の失敗」だ。私には、民主主義という錦の御旗を掲げる建前と、資金配分に見られる前時代的な本音との矛盾が、世界を混乱させているように見える。
反アサドの欧米に加え、親アサドのロシアがIS攻撃に加わったことで、ISそのものは壊滅するかもしれない。しかし、
- 欧米の中東政策の失敗
- 先進国の所得格差の拡大
- 欧州の若者の失業率の高止まり
これらの要因すべてが、簡単には解決しない問題である現状に変わりがない限り、第2、第3のISが現れる土壌には変わりがない。ISは日本人の誰もがテロの標的だと警告したが、それが世界の現実であると認識する必要があるだろう。
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『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2015年11月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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