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新元号に浮かれるな。新年度に入ってわかった2019年の日経平均が下げて終わる理由=江守哲

配当権をめぐる動き

3月26日は配当権利付き最終売買日でした。この日に株式を保有していれば、個別企業の配当を得ることができる権利を確保できます。投資家はその権利を確保することに躍起になります。

しかし、過去を見ると、その後に株価が下げることが少なくありません。今回の日経平均の配当権利落ち分は172円でした。

3月27日以降の市場でこの権利落ち分をすぐに埋められるかに注目していましたが、結果的に月内には埋めきれませんでした。これ自体はネガティブな印象があります。

しかし、週明けの市場でこれを完全に埋めています。この基調が続くと、目先は強い値動きになる可能性がありそうです。

黒田日銀総裁の発言からわかること

黒田総裁は保有しているETFについて「期末時点で時価が簿価を下回る場合は、引当金を計上する。決算上の期間損益は下押しされる」としました。

その一方で、「ただし、日銀の損益は国債の利息収入やETFの分配金の収益などいろいろな要因を組み合わせて全体として決まってくる」とし、「ETFの要因だけを取り出して、債務超過になる水準を答えるのは適当ではない」としました。

さらに、「量的・質的金融緩和は、バランスシート拡大で収益が押し上げられる一方、出口時には、当座預金に対する付利金利引き上げによって収益が減少しやすい」と指摘しました。

そのうえで、「経済・物価情勢が好転して付利金利を引き上げる場合には、長期金利も相応に上昇する」とし、「当座預金に対する支払い利息が増える一方、保有国債はより高い利回りの国債に順次入れ替わるため、受け取り利息は増加する」として、「出口時の収益面への影響は、受け取り利息も含めたバランスシート全体で考える必要がある」としました。

また、「15年度から利息の受け払いで利益が上振れる局面では、一部を積み立て、下振れる局面では取り崩すことのできる債券取引損失引当金の拡充を行った」とし、「こうした措置は、出口に向けた収益の振れを平準化して、財務の健全性を確保する観点から一定の効果を持つ。事前の対応としては十分なものと認識している」としました。

さらに黒田総裁は、「日銀が保有する国債の残存期間は7年強だ」とし、「景気が回復し、物価が上がる中での長期金利はなだらかな形で金利が上がる時には、金利の高い国債に乗り換えていく。付利が引き上げられても、両面をみていかなければならない」と繰り返しました。

また、「保有国債は償却原価法を採用しており、長期金利が上昇して国債価格が下落しても、決算上の期間損益で評価損失が計上されることはない。大きな問題が生じることはない」としました。

株価が本格的に崩れ出した時、日銀が目先の金融政策に加え、自身が保有する株価対策も行う必要に迫られます。

これは大変な作業になるでしょう。黒田総裁の政策がいつまで通用するのか、今後はこれまで以上に難しい政策運営を迫られることだけは間違いなさそうです。

そして、その政策運営が失敗した場合、日本の金融市場は大混乱になることだけは確かです。

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