家督相続での相続順位について
旧民法下では、第1順位の相続人は、前戸主であった被相続人の子供や孫である直系卑属。ちなみに第1順位の相続人が複数いる場合は、被相続人と最も親等が近い者のみが相続権を獲得することが出来ました。
しかし、最も親等が近い直系卑属といえども、その中でも優先順位が設けられており、男子・年長・嫡出子が優先。そして、認知のある男子の非嫡出子は女子の嫡出子に優先されるなど、その時代に女性が相続人となれるケースはかなり稀であったとも言われております。
そして第2順位の相続人は、被相続人が生前もしくは遺言によって指定した方。第3順位の相続人は、被相続人の父母や親族会が同籍の家族の中から選定した方。第4順位の相続人は、被相続人の父母や祖父母、曾祖父母などの直系尊属。
そして最後、第5順位の相続人は、被相続人の親族会が、親族・分家の戸主、または本家・分家の家族もしくは他人の中から選定した方。ただし親族関係のない他人へ相続させる場合には、裁判所の許可が必要でした。
このように、現民法よりかなり細かく順位が設定されていることが分かると思います。
また、旧民法下で第3順位・第5順位の相続人を決める場合には、親族間での話し合いによって決めるというのも、その時代独特の決め方ですよね。
そして、旧民法下でも現民法下でも、高順位の相続人がいる場合には、次順位の相続人に相続権は発生しないというのは同じですが、同順位の相続人がいる場合には、等分で相続するのではなく、誰か一人が単独で相続するというのは、家の存続を最優先に考えるその時代特有の決まりのような気もしますね。
70年以上前に廃止された家督制度から現在も採用されているもの
さて、こういうのね今から70年以上も前に廃止された相続制度である家督相続。
しかし現在でも、家督相続が採用されることがあるというのをご存知でしたでしょうか。
それは、相続登記。
相続登記を行わずに相続を繰り返すことによって、空き家問題に発展し、社会問題化しているという話を聞くことも多いでしょう。
ということは、相続制度が変化した昭和22年以前に開始した相続で不動産を登記せずに今まできたというケースでは、現在でも家督相続に基づいて登記しなければならないのです。
ある意味、家督相続は完全に終わっていないのかもしれないですね。
さて今回は、戦前まで採用されてきた家督相続について解説しました。
旧民法下では、長男が全財産を相続するという考えのもと、相続を迎えていたわけですが、他の兄弟姉妹から不満は出なかったのか、疑問に思うことだと思います。
長男が全財産を相続と聞くとあまりに不公平に感じるかもしれませんが、家に重きを置くその時代、親戚付き合いや親の介護など、長男が抱える苦労は計り知れなかったとも聞きます。
財産をもらえる分、それ以上の苦労が伴う時代であったのです。
そして長男以外の子供たちが何の恩恵も受けていなかったのかというとそういうわけでもなく、結婚を機に家を出る際には、それ相当の援助を受けていたこともあり、特に不満が出ることもなかったと言われています。
その時代の風習が強く反映される法律。
数十年先には、今の相続の在り方が大きく変化しているかもしれませんね。
『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2019年4月8日・10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。
[ほぼ 平日刊]
最近なにかと話題になっている相続。実は相続手続きの約9割はご自身で行わなくてはならないのです。そうであるにも関わらず、相続が発生してから急いで手続きに取り掛かる方がほとんど…。また、相続トラブルはごくごく一般的なご家庭ほど発生しやすいのです!うちは資産家でもないから関係ないとは言ってられません。相続手続きに関する記事はもちろん、事前の相続対策についての記事も配信していきます。疑問点やご質問がありましたら、お気軽におっしゃってください。わかりやすく回答させて頂きます!