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中国、経済大国から転落へ。トランプの策略で経常赤字・ウソ統計・高齢化の3重苦が襲う=勝又壽良

米中通商協議は大詰めを迎え、中国はほぼ米国の要求を受け入れざるを得ないでしょう。今後、輸出増が望めない中国経済はどのような姿を描くのでしょうか。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年4月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

中国経済、恐るるに足らず? ニセ統計を裏付ける論文が出てきた

大詰めを迎える「米中通商協議」

米中通商協議は、大詰めを迎えています。中国は、ほぼ米国の要求を受け入れざるを得ません。

USTR(米通商代表部)代表のライトハイザー氏は、中国がWTO(世界貿易機関)ルールに100%違反していると指摘しています。このルール違反によって、中国経済はこれまで高い経済成長を遂げてきました。

ルール違反を糺(ただ)されるとなれば、中国は輸出もこれまでほどの増加を望めません。となれば、今後の中国経済はどのような姿を描くのでしょうか

まず、概略だけを申し上げて、各論は後で展開します。

高齢化で経常赤字へ

中国の貿易収支の黒字が減ることは避けられません。

中国は現在、世界最大の貿易黒字を出しています。各国との比較可能な2017年時点で、中国は4,195億ドル。2位はドイツの2,813億ドルです。今後、中国の貿易黒字は減少見込みゆえに、ドイツと接近します。

中国にとって困った問題は、貿易黒字の減少が経常黒字の減少に結びついている点です。サービス収支や所得収支で、いずれも大赤字を出しているからです。この結果、貿易黒字の減少がストレートに経常黒字の減少、ないし経常赤字になります。

中国が、対外的に「大国」として振る舞えたのは、膨大な経常黒字によって海外への投資余力を持っていたからです。「一帯一路」計画が登場した当時の経常黒字は、2,360億ドル(2014年)、3,041億ドル(2015年)と最盛期にありました。

これが、今年は経常赤字に転落する見込みです。「有為転変」の世とは申せ、中国の経常収支は大きく悪化します。

今年の経常赤字は、米中貿易戦争による影響と言うよりも昨年春頃からの予測でした。趨勢的に貿易黒字の減少と、所得収支赤字やサービス収支赤字の拡大傾向から判断されたものでした。経済的(ISバランスと言います)には、国内貯蓄の減少が経常黒字の圧縮や赤字の減少を招いたのです。

人口高齢化の影響がそのまま出てきました。この事実は、きわめて重要です。実は、「中国経済、恐るるに足らず」という状況に立ち至っているのです。「張りぼて」と言っても良いでしょう。世界は、虚像に怯えたのです。

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