中国経済、恐るるに足らず
中国は、世界最大の人口を擁する国家です。
常識的には、人口構成が若々しいと誤解を受けますが、そうではありません。「一人っ子政策」によって、総人口に占める生産年齢人口(15〜59歳)比率を高め、経済成長を促進しました。一方では、それが逆効果になって「合計特殊出生率」(1人の女性が生涯に生む子どもの数)を劇的に引き下げました。これが、中国経済の命取りになってきました。
中国政府は、あまりの急落に危機感を覚えて現在、発表を取り止めています。2015年の合計特殊出生率「1.05」が公的に知りうる最後の数字です。「一人っ子政策」は2015年に中止されました。その後は、「2人」までの出産が自由になりました。2016年は増えたものの、17年と18年は急落しました。このことから、合計特殊出生率は「1」を割っていると推測されています。
韓国が昨年「0.98」となって、史上最低と騒がれました。中国も同様の史上最低値に落込んだと見て間違いありません。
私は、韓国の「人口危機」をしばしば取り上げて警鐘を打っています。中国も、すでに「人口老成国」に成り下がりました。
このことは、中国が国際的な経済競争において、落伍したという意味です。中国の経済的な存在を恐れる必要性はなくなったと言えます。
特に、今回の米中貿易戦争は、中国経済にとって決定的な意味を持っています。習近平氏は、このことを完全に理解しているとは思えません。「米国が殴ってくれば、中国も殴り返す」という程度の認識であるからです。
中国のニセ統計を裏付ける論文
中国の経済力は、もはや成長の限界に達し、大きく屈折を始めています。だが、GDPはそれを率直に表していません。GDPの粉飾問題が起っているのです。
米ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所は3月7日、中国経済は公式統計をGDP規模で約12%下回り、近年は実質成長率が毎年約2%ポイント水増しされてきたとする論文を発表しました。中国の公式統計に対する根強い懐疑論を改めて裏付けた形です。
論文は、中国の景気減速は政府が認めた以上に深刻だとの懸念も示しました。公式統計ベースでも、中国経済の2018年の成長率は6.6%と発表され、1990年以来最も低い水準です。しかし、約2%ポイントの水増しとすれば、昨年の成長率は5%ラインを割って、4.6%に過ぎません。
ここで、ブルッキングス研究所の概略を説明しておきます。あっちにもある、こっちにもあるというレベルのものではありません。1927年に現在の体制となり、中道・リベラル派の研究拠点として世界的に著名な存在です。
中国全体のGDPを推定したところ、2007〜08年度までは、国家統計局の調整は妥当なものだったようです。偽りの統計ではなかったと指摘しています。
しかし、「地方政府によるGDPの過大申告が2008年以降、エスカレートしても、国家統計局は相応の下方修正を施していない」と研究報告は指摘しています。これは地方官僚が大きな権力を持つため、国家統計局の職員が彼らと全面対決することを回避する意図があるからだと報告書はみているのです。以上は、ロイター(4月5日付け)が伝えました。
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