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日米貿易交渉では日本が優位に?いま知っておくべき株式市場を動かす海外事情=山崎和邦

日米貿易交渉では、日本が有利に立っているはずだ

日米貿易交渉で日本が有利な立場に立つのは、米国抜きのTPP11の発足を日本が主導し、EUとも経済連携協定を発効させたのは日本主導だったからだ。全部を安倍政権の主導でやってきた。

このため米国の対日輸出は農産物を含めて一段と競争力を失った。このような状況を招いたトランプ政権に米国では不満の声が高まるはずである。そして事態収拾を迫る声も高まろう。

また、米国では鉄鋼・アルミ輸入制限に不満が高まっているはずである。ごく一部の企業が恩恵に預かる一方、大半の米国人は物価上昇という形でツケを支払わされるからである。

トランプが交渉の武器にしているのは自動車関税である。トランプが日本車を対象に加えれば、日本の自動車メーカーも部品メーカーも大きな打撃を受ける。

1962年に成立した通商拡大法によって大統領自身が輸入制限する権限が与えられている。ケネディ大統領の時代だった。当時トヨタは暴落した。その頃8円配当(と記憶しているが)のトヨタ自動車株が80円台になったと記憶している。筆者の記憶が正しければ、今は「This is Japan銘柄」の代表たるトヨタが10%近い利回りの株価にまで下がったことになる。

これほどアメリカの対日自動車関税は厳しい(ただし、時の通産官僚は「官僚たちの夏」(★註)の時代だったから、賢明にも日本の自動車産業が対外競争力つくまで保護しアメリカの自動車を半強制的に日本のタクシー会社などに買わせたりして米の猛攻を躱した。

当時ヒラ社員だった筆者は都内営業用には社用車を使わされたが、半数以上がアメリカ車だった。義理で買わされたものであろう。この通産官僚の保護政策によって日本は懸命に対外競争力をつけ、その時から15年後にはアメリカを脅かす存在となり、その後レーガン大統領が日米構造改革協議と称して日本に強力な輸入制限をかけてくるまでに日本の対米競争力は強くなった。

「ものづくり日本」の強さは、半世紀前の通産省による保護政策の中で育ったという経緯がある。

今の通産官僚も官邸官僚も比較にならないほど、官僚たちの賢明さと実行力が顕著だった時代である。72年に筆者が初めてウオール街に行かされた時、メリルリンチの営業マンとの食事会で彼らが「日本にはツーサン、オークラがあるから日本は強い」と言っていた。通産省と大蔵省の対外保護政策のことである。

今はそういうわけにいかないから、トランプの自動車関税が実現すれば日本にとって大打撃となるが、それは鉄鋼やアルミのようには運べないであろう。

(★註)「官僚たちの夏」城山三郎著、通産次官佐橋滋をモデルとした、勇気と実行力を持った優秀な官僚が日本の製造業と金融業を対外圧力から保護し、かつ育成した時代があった。

こういう経過を経て「ものづくり日本」の力は伸びたことは事実であるが、一方官僚制度は非常に弱体化したことは事実である。

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