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楽天ペイ、Suicaを取り込んで「一人勝ち」へ。電子マネーとコード決済の戦いは終わった=岩田昭男

楽天に心強い「交通系パートナー」の登場

楽天も当初はリアル分野への進出に苦戦したが、何とか足がかりを得た。そこへ飛び込んできたのが、すでにリアルの社会インフラとなっているSuicaとの提携であるから、まさに渡りに船であった。(だから「楽天の一人勝ちだ」という声も出てきている)。

というのも、楽天経済圏の中で交通系のパートナーはおそらく初めてなので、まったく新しい分野が開けたことになるからだ。

しかも、Suicaの利用者は、毎日利用してくれるし、利用単価も高い。カード事業者としては喉から手が出るほどおいしい優良顧客である。

その人たちを取り込めるのだから、楽天とすると「してやったり」の心境だろう。さらに電車に乗って楽天ポイントが貯まるようになるわけで、「次のステップも見えてきた」と経営幹部も安心しているのではないか。まさに前途洋々だ。

JR東日本のメリットが少なすぎる?

それに対して、JR東日本の焦りが目立つのである。

ポイント欲しさに自らの資産を投げ売りして、楽天にくれてやるようなものである」「ポイントがそんなに欲しくて大切なら、まずJREポイントという東日本を強調した曖昧な名前を止めて、Suicaポイントにしたほうが良いのではないか」といった声が溢れている。

たしかに楽天のメリットに比べて、JR東日本の得るメリットは少なすぎるので皆が心配しているのだ。

卵を預けて孵化してもらう「托卵戦略」

ただ、最近のSuicaを取り巻く状況を見ていると、それほど単純な話ではないように思える。特に昨年8月から始まった「みずほ銀行」との提携が引っかかるのだ。

JR東日本はみずほ銀行と提携して「Mizho Suica」を活用するプロジェクトを始めている。JR東日本は様々な企業と組んでスマホにSuicaを入れて、使わせようとしている。しかし、当たり外れが大きいこともあり、かなり悩んでいるようだ。

私はこのSuicaの繁殖行動を「托卵戦略」と名付けた。ホトトギスがウグイスの巣に卵を産んで、ウグイスにヒナを育てさせるという独特の繁殖行動のことだ。まず最初にそれをみずほ銀行でやったという見立てをしている。

みずほユーザーのうち、希望者には「Mizho Suica」をスマホのウォレットで生成させて、それを通勤や買い物で使ってもらう。そうした会員が増えれば、Suicaもスマホでどんどん増えていく。その第2弾を楽天で予定しているのだ。それから第3弾、第4弾もあるかもしれない。

しかし、無闇に数だけ増えれば良いというものではない。最良のパートナーと組んで、最高のパフォーマンスを得られなければ意味がないのだ。

そこで新しいアイデアをくれたのが、メルペイとiDのコラボだったと思われる。

Next: コード決済は電子マネーの敵じゃない?「托卵戦略」が拡大中

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