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現役世代が2000万円問題に怒りを覚えるのはなぜ?収支を見える化すれば解決する=小屋洋一

金融庁市場ワーキンググループの報告書で話題となった「2,000万円不足」。今回は全国平均値ではなく、個々人に実感のあるリアルな数字になるように考えます。(『億の近道』小屋洋一)

プロフィール:小屋洋一(こや よういち)
ファイナンシャルプランナー。株式会社マネーライフプランニング代表取締役。1977年宮崎県生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、総合リース会社に就職。2008年、個人のファイナンシャルリテラシーの向上をミッションとした株式会社マネーライフプランニングを設立。

平均で語るのは無意味”毎月5万円不足問題”

あなたの場合はこう考えよう

金融庁市場ワーキンググループの報告書で話題となった「2,000万円不足」というのは、総務省の家計調査(2017年)で高齢夫婦無職世帯の家計収支が平均で月5.5万円赤字なので、単純に20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の金融資産の取り崩しが必要であると述べたものである。

そもそも元のデータとなっている家計調査とは、全国で9,000世帯を偏りのないようにサンプル調査し、分析しているものである。そこでの高齢夫婦無職世帯の平均ということなので、全国での数字を一括で平均算出をしていることから、都市圏に住む人にも、郊外に住む人にもどちらにも一生活者の実感としては、平均値では現実感のない数字になっていることが推察される。

そこで、今回は全国平均値ではなく個々人のリアルな実感のある数字になるように少し考えてみたい。

まずは収入をみてみよう。

ここでは年金である社会保障給付が19万1,880円が平均である。年金をもらっている人は夫婦2人でこれだけの年金をもらっているであろうか?少し計算してほしい。

これ以上もらっているにしても、これ以下しかもらっていないにしても、現在の年金収入を確認するだけで平均値からどれほどかけ離れているかが理解できるだろう。

また、収入には約1万3,000円ほど勤労、事業収入があるのが平均となっているが、無職世帯なのだから多くの世帯ではこの収入は無いのではないだろうか?

今度は支出を確認しよう。

最大の支出は食料費となっており、6万4,444円となっている。筆者はFPとして日々様々な家計の相談に乗っているが、こうした食料費などは本当に世帯によって千差万別である。

ここでも恐らく2~3万円の世帯から20万円を超える世帯まで幅広く存在するのだと思う。

ここでも平均で議論するのではなく「あなた」の家計についてぜひ考えてみてほしい。

次に住居費を確認する。

住居費は平均1万3,656円である。

これは私を含め実感値と大きくかけ離れるのではないだろうか?

原因は賃貸であれば単純に住居費として計算されるが、持ち家であればその住居費はほとんどかからないという前提で計算されていることにある。

つまり、家計調査でサンプルとなっている60歳以上の高齢世帯は持ち家率が90%を超えているので、ほとんど賃貸物件に居住している世帯の数字はこの平均には反映されていないのである。

仮に65歳を超えて賃貸物件に住んでいる人は、この平均値からは大きく乖離すると思われるし、それも東京近郊と地方ではあまりにも大きな差があるはずだ。

ということで、これまで述べてきたとおり、家計調査の平均値で語ることは報告書としては一定の意味があるのかもしれないが、「あなた」の状況を考えるのには何の意味もない。

今回の報告書の件をよく考えてみると、筆者がwebを観ている限りにおいては、話題にしていた層は40代~50代の人々だったのではないだろうか?なぜなら既に60歳以上の方々は実際に年金を受取り、現在生活をしているので、家計調査を見るまでもなく年金生活者としてのリアルな実感があるはずである。

その人々が架空の平均の話で語られる文脈に反応する必要はないのではないか。

そして若年層である20代や30代は、まだまだ老後の生活など想像もつかないし、ある意味で公的年金に対する期待値も高くない世代なので、こちらもあまり真剣に腹を立てるところまでいかないのではないだろうか。

40代~50代の方々は、ある程度長期間公的年金を納めてきている人々である。またその一方で自分たちの老後の生活イメージというものが決してリアルに感じられるようにもなっていない。この漠然とした不安感が今回の怒りの真の原因ではないかと思う。

Next: 将来の2,000万円問題が不安な場合はどうしたらいいのか?

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