直前の報道でも東北にフォーカスされなかった
それは、12日の昼から夜のテレビ放送が、まるで警戒した雰囲気がなく、NHKの報道も首都圏の話題ばかりで、ありきたりのマンネリトークとルーティンフレーズばかりで埋められていたからだ。
「早めの避難を心がけて下さい」「ネット上に情報サイトがありますから確認して下さい」「スマホでも簡単に見れますから」。北関東・東北に住む高齢者にとって、自分に関わるメッセージはシンプルにそれだけだった。
テレビに流れるのは、城山ダムの緊急放流とか、多摩川の奔流の絵とか、横浜港の現在の様子とか、関東整備局(さいたま新都心)からの中継とかだった。中身は空っぽで、独自に取材した価値ある報道は皆無だった。
福島と宮城に迫った破局を伝える情報は何もなかった。緊急番組のスタジオの専門家は、国交省の河川情報サイトを画面でいじくって、紫色に変わった河川の氾濫危険情報を軽く見せていたが、東北はフォーカスされなかった。丸森町の雨量が600ミリを超えるという予報もなかった。
首都圏を過ぎれば平常運転
12日夜の民放テレビの番組編成を再確認してみると、どこも普通の土曜夜の番組を流している。これを見たら、本宮市で犠牲になった高齢被害者でなくても、今回は難なく過ぎて夜が明けるだろうと思うのは無理はない。
北関東で犠牲になった例で、深夜に車で避難を始め、洪水で車ごと流されて溺死という報告が少なくない。普通にテレビを見ていたら、民放はいつものお笑いタレントが出て漫談しているし、NHKは「早めに避難して下さい」とアリバイトーク(政府からの義務履行の)だけだから、視聴者は、今回は大丈夫だろうと思うだろう。
池田伸子も、中山果奈も、政府(内閣官房・国交省)が用意した簡単なメモを読み上げていただけだ。メモは菅義偉が差配したもので、要するに、国民に対しては何も知らせず、「早めの避難を」と「サイトの情報をスマホで確認しろ」と、それだけ言っとけということだ。
あとは自衛隊がヘリで行くから、救助現場をきっちり上から撮って流せよと、そういう命令だったのだろう。菅義偉らしい。
薄っぺらすぎる災害報道
今回だけではないけれど、安倍政権になって以降、最近の数年間、テレビ(NHK)の災害報道が本当に中身がない。
薄っぺらというよりヌルで、小学生低学年向けの「災害報道」をだらだらと流して時間を潰し、災害報道しましたとアリバイを埋めている。
北関東・東北の人々にとって重要なのは、付近の河川の状況と今後の雨量とその影響だっただろう。避難所開設状況を12日午後に流すことだっただろう。
首都圏に住む私にとっては、12日に知りたかったのは、荒川・利根川と多摩川の現状のアップデートだった。
実際は、これらの観測情報は、5ch(2ch)のスレが最も濃い内容を、フェイク含めて虚実織り交ぜ、5chらしく右翼に都合のよいプロパガンダに味付けながら、素早く興味深く発信していたのである。
国交省の河川情報をサイトを見ろと言っても、そこには解説はなく、網羅的概括的な観察はない。変動する生データが並んでいるだけだ。それらは複数の人間によって監視され、分析され、議論されなければ意味ある情報にならない。