極小期と火山噴火の激増
このように、寒冷化の現象は現われていない。むしろ、平均気温の上昇、海水面の上昇、偏西風の変化、巨大台風やハリケーンの発生など、異常気象などの極端な変化が現れている。
それらはみな、地球の温暖化から予想できる現象ばかりである。
では、2020年頃からはじまる新たな極小期「サイクル25」でも、そのまま温暖化が進行するのだろうか?
急速な温暖化によって寒冷化の効果が完全に相殺されている現状では、たしかにそのようにいうことができるだろう。
しかし一方、極小期と興味深い対応を示す現象が観察されている。それは、極小期に火山噴火、そして地震が集中して発生するという現象である。
「マウンダー極小期」、さらに1790年から1830年まで続いた「ダルトン極小期」にも、こうした現象が記録されている。以下が、これらの時期に噴火した巨大火山だ。
・1580年:ビリー・ミッチェル火山(パプアニューギニア)
・1600年:ワイナプチナ火山(ペルー)
・1641年:マウント・パーカー(フィリッピン)
・1641年:ロング島火山(パプアニューギニア)
・1783年:ラキ火山(アイスランド)
・1815年:タンボラ火山(インドネシア)
これらはみな巨大な火山である。こうした火山の噴火が極小期に連続的に集中したのだ。
現代の理論では、「マウンダー極小期」と「ダルトン極小期」の寒冷化は、太陽活動の停滞というよりも、巨大火山の連続噴火によって、特に北半球の大気が火山灰で覆われ、太陽光線が遮断されたことが原因ではないかと見られている。
火山噴火の激増による平均気温の低下である。
なぜ極小期に火山噴火が集中するのかは、はっきりとは分かっていない。しかし、同じ時期に巨大地震が多発することも記録されている。
2020年から「グランド・ソーラー・ミニマム」
いまのサイクル24は極小期である。黒点数は少なく、太陽活動も不活発だ。
たしかに2009年の12月頃からはじまったサイクル24では、これまでにないほどの火山噴火や地震が相次いで起こっている。2011年の東日本大震災はその代表的な例だろう。
だが、「マウンダー極小期」や、また「ダルトン極小期」で起きたような寒冷化がこれから起こるとは考えにくい。急速に進む温暖化によって、寒冷化の効果は相殺されてしまうからだ。
しかし、2020年からはじまるサイクル25は、サイクル24よりもさらに黒点数が少なく、太陽活動が不活発になる「グランド・ソーラー・ミニマム」になると予想されている。サイクル23など過去のサイクルの黒点数を93%から97%の確率で予測に成功しているイギリス「ノーサンブリアン大学」の数学者、ヴェンレンティナ・ザーコヴァ教授は、サイクル25を予測して、黒点数が極端に減少し、太陽活動が不活発になる「グランド・ソーラー・ミニマム」になると予測している。
もし極小期に火山噴火と地震が増加するのであれば、2020年以降はいま以上にこれらの発生が増える可能性が高い。サイクル25のピークは2024年から2026年頃と見られている。