思考実験──片づけるべき用事とは
『ジョブ理論』によれば、以下の問いに答えることで用事をより具体化できるようになる、としています。
1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。
2.苦心している状況は何か。誰がいつどこで何をしているときか。
3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。
4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。ジョブを完全には片づけてくれない商品やサービスに頼っていないか。複数の商品を継ぎはぎして一時しのぎの解決策をつくっていないか。
5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。
出典:『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(第2章 プロダクトではなく、プログレス)
用事の特定
イノベーションを起こすための最初のステップは、ある状況下で顧客がなし遂げようとしている進歩を特定することです。そして、その進歩には機能的、感情的、社会的側面があり、どれが重視されるかは文脈によって異なってきます。また、用事を特定することにより、真の競合相手もみえてきます。では、同社の場合はどうなるのでしょうか。
今回は、同社グループが課題としてあげる「新規サービスの実現」を取り上げます。同社グループはそれを、次のように認識しています。
これまでに「就職カレッジ(R)」から「女子カレッジ(R)」や「セカンドカレッジ(R)」、「新卒カレッジ(R)」を派生させてきたように、20代の未就業者の中で細かくセグメントを分けることで、対象となる求職者のニーズを掴んでまいりました。一方で、30代のフリーター、留年生、留学生、育休明けのママやシングルマザー、高卒や通信制高校卒の未就業者など、「就職ポテンシャル層」はまだまだ存在していると認識しております。テストマーケティングを積み重ねることで適切なセグメンテ─ションを行い、セグメントに合ったサービスを開発することでさらなるサービスを創出してまいります。
また、時代の変化に伴って求職者の趣向やクライアントのニーズも変わってまいりますので、教育融合型人材紹介サービスの根幹となる教育研修サービスにおいても、新しいコンテンツの開発、ライセンスの取得に取り組み、時代の変化に適応してまいります。
ここで着目したいのは、副収入を得たいという「求職者の趣向」と社員成長や新事業に期待する「クライアントのニーズ」つまり、副業です。
こういった状況で、一方の顧客である求職者がなし遂げようとする進歩の機能的側面は「仕事を探す」ということ。感情的側面として「副収入」「時間の節約」「労力の軽減」「面倒の回避」「キャリアアップ」といったことを重視するでしょう。
もう一方の顧客であるクライアントがなし遂げようとする進歩の機能的側面は「副業を解禁する」ということ。意思決定者であれば、感情的側面として「自社社員の成長」「新規事業の立ち上げ」、社会的側面として「外部のノウハウを吸収する」といったことを重視するでしょう。