年金に頼らず働け?
また、被用者保険の適用範囲を広げます。
週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者について、従業員数500人以下の企業においても厚生年金保険を含む被用者保険の適用対象とします。
短時間労働者への被用者保険の適用要件のうち、勤務期間要件について「1年以上」を「2月超」に改めます。
つまり、年金給付開始年齢はなるべく遅くして、年金保険料は広く徴収するというための改正だということです。
これを政府側の言葉では、「改革案は長く働きたい高齢者が増えているのを踏まえ、受給開始年齢を75歳まで延ばせるようにする」と表現しています。
「働きたい」高齢者への配慮ではなく、「年金に頼らず働け」ということでしょう。
年金給付開始年齢を遅らせるほど、毎月の受給額は増える……。
安倍首相は「働き方の変化を中心に据えて改革し、年金制度の安定性を高める」と説明しています。
高齢者らが多いパート労働者などが厚生年金に加入できるよう、加入要件である企業の従業員数の基準を緩める。「501人以上」から段階的に下げ「51人以上」にすることで、新たに65万人が加入する見通しとなります。
安倍首相は、「社会保障制度の支え手を増やし全ての生活者の安定につなげる……」としていますが、今の年金制度はもう維持できないことを述べているに過ぎず、
・なるべく年金はもらうな
・保険料は納めろ
ということになっています。
「人生100年」の旗の下、高齢者保障制度に関しては、全て変更し、確定拠出年金制度も、60歳以降も拠出金を払うことができるようにしたわけです。
受給開始の繰り下げは本当にお得なのか?
野党側はこの要件を撤廃する法案を今国会に提出しています。
果たして、安倍総理が言うように、年金支給開始年齢を後ろに遅らせることで、年金支給額は得をするのでしょうか。
冒頭で、日本共産党の宮本議員が、税金額を考慮すれば、85歳まで年金が支給される前提だと、75歳支給開始の方が、65歳支給開始よりも総額は減るということが指摘されました。
今度は「マクロ経済スライド」の観点から見てみましょう。
先ずは「マクロ経済スライド」とはなにか…
「マクロ経済スライド」とは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みと、厚生労働省は説明しています。
つまり、年金制度維持のために保険料を上げずに済むように、給付額を引き上げないようにしようというものです。
そう考えると、少子高齢化が益々進んでいく状況であれば、年金給付額が物価にあわせて上がることは難しくなりますので、安倍首相が言うように、支給開始年齢を遅らせても、必ずしも年金受給額が増えるとは言えないかもしれませんね。
政府は、75歳まで遅らせると月額が84%増えると説明して、多くの人に、年金受給を遅らせて働き続けることを推奨しようとしています。
ただ、厚労省の高橋俊之年金局長は、「マクロ経済スライド」を発動し続ければ、“8割増”しても現在の水準より低くなることを認めています。