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「異次元緩和」からまる3年の効果を数値で検証する=久保田博幸

物価が上がらない本当の要因は?日銀に求められる説明責任

これに対して日銀は原油価格の下落を主要因に挙げている。また、2013年4月の消費増税の施行が原因と指摘する向きもある。

コアCPIは2013年4月のマイナス0.4%から翌月5月にはゼロ%に浮上し、そのままの勢いで消費増税がスタートした2014年4月に前年比プラス1.5%まで上昇した。まるで日銀の異次元緩和に即効性があるかの勢いであった。ところが、消費増税スタートのタイミングで急低下する。

2014年4月に100ドル台となっていたWTIは2015年1月には50ドルを割り込み半値以下となった。コアCPIについては原油価格との連動性が高いことは当然、日銀も理解していたと思われる。ただし、これほど急激な原油価格の下落は想定していなかったということであろうが、それはつまりマネタリーベースだけ増やしても、このような外部要因により簡単に下方圧力が簡単に掛かってしまうということは、どれだけマネタリーベースに物価への影響力があるのかという問題も出てこよう。

また、消費増税のタイミングで物価がピークアウトしたかに見えるが、そもそも2013年4月から消費増税がスタートする2014年4月までに物価が前年比マイナスからプラス1.5%に上昇したのは、マネタリーベースやそれによる長期金利の低下が要因であったとは言えまい。なぜならば2014年4月以降もマネタリーベースやそれによる長期金利の低下が起きても物価に上方圧力は掛かっていない。

それよりも2012年11月頃からの欧州の信用不安の後退のタイミングでのアベノミクスと称された輪転機発言をきっかけとした円安・株高による影響が大きかったと思われる。ドル円は2012年10月に80円割れとなっていたのが、2013年4月に98円近く、2014年4月には102円台となっていた。このドル安により輸入される原材料価格の上昇、消費増税のタイミングでの値上げや駆け込み需要、さらに株高による効果などが相まって、コアCPIはプラス1.5%に上昇したとの見方のほうが素直ではなかろうか。

アベノミクスとそれを実現した異次元緩和は、たしかに円安・株高、長期金利低下をもたらせた。

円安などは一時的に物価の押し上げ圧力となったが、マネタリーベースの増加そのものが物価を押し上げていたわけではなかった。さらにマイナス金利によるイールドカーブの押し下げも同様に直接的な物価に波及する効果はかなり不透明である。もし日銀が今後も物価目標2%に固執するならば、なぜ予想通りに物価は上がらなかったのかの理由説明したうえでの方針転換も必要になるのではなかろうか。


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牛さん熊さんの本日の債券』2016年4月4日号より
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