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リスクを避け続けると貧困に落ちる?ドラッカーに学ぶビジネスチャンスの掴み方=俣野成敏

立ちはだかる「4つのリスク」

(1)の「負うべきリスク」というのは、ビジネスを始めることで、必ず負うことになるリスクです。せっかくビジネスを始めたものの、マーケットが突然変化して需要がなくなってしまうとか、顧客を他社に取られてしまう、取引先が倒産することによって連鎖倒産に巻き込まれてしまうなどなど……。

また、それぞれの業界に応じたリスクもあります。ドラッカー氏は、事例として医薬品やワクチンの開発メーカーを挙げています。こうした業界は、開発に時間と費用がかかる上に、患者に重篤な副作用が出たり、医療事故に見舞われたりする可能性もあります。

(2)の「負えるリスク」というのは、たとえば新規事業にチャレンジした結果、失敗して資金や労力を失ったりすることです。チャンスをモノにするには、企業はリスクも考慮した上で先行投資を行うことが必要です。ビジネスでは損失もある程度、覚悟しなくてはなりません。ただし、それは会社が負える範囲内でなくてはならない、ということです。

(3)の「負えないリスク」というのは、果敢にチャレンジしたものの、失敗して会社が倒産してしまうようなリスクのことです。このような状態はチャレンジとはいわず、博打と同じです。ドラッカー氏は「成功しても、その成功を利用できないような研究・開発も、3の負えないリスクに含まれる」といいます。たとえば現在、市場がない商品の開発に成功しても、それ以上、ビジネスが発展しない可能性もあります。

人は、革新的な商品とは、世の中にない商品のことだと思いがちです。しかし「そもそもそこに需要がないから市場がない」と考えることもできます。通常は、すでに存在していて、かつ今後も成長の可能性がある市場へアプローチすることが、企業の基本戦略になります。

今回、取り上げた名言は、(4)の「負わないことによるリスク」について述べたものです。

(1)~(3)のリスクに関しては、すでに多くの人が意識しているのではないかと思います。しかし(4)に関しては、ほとんどの人が見過ごしがちです。

要は「負わないことも、またリスク」なのです。

大半の人はリスクを負わないことで「危険を避けられた」と考えます。しかし実際は、これがどれだけのチャンスロスを起こしているのか?という点に、注意しなければなりません。

リスクを避けていては何も得られず、じり貧になっていく

実は「負わないことによるリスク」は、リーディングカンパニーとて例外ではありません。むしろ業界のトップ企業ほど、このリスクが大きくなります。

事例を挙げると、果敢にハイブリッドカーの開発に挑み、THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)によって、2000年代初頭に他を圧倒する成功を手にした王者トヨタも、現在、EV(電気自動車)では遅れを取っているとされています。

トヨタもEVには多額の投資を行い、トップの座を維持しようと必死です。しかし、多くの関連企業や部品メーカー、ディーラーなど、抱えているものが大きければ大きいほど、方向転換が難しくなります。

名言に事例として挙げられているGEが、長年、名を連ねていたダウ工業株30種平均の構成銘柄から外れたのは、2018年のこと。世界的な企業も安穏とはしていられない、ということです。

人は、多くの場合「リスクをいかに小さくするか?」ということを考えがちです。しかし、先にも述べた通り、リスクとチャンスは表裏一体のものです。もし、これをお読みの方の中で、「自分は今まで、なかなかチャンスに巡り会えなかった」とお感じの方がいれば、もしかするとリスクにばかり目を向けていたのかもしれません。

思い当たるフシのある方は、以後、「いかにチャンスを大きくしていくか?」と発想を転換してみてはいかがでしょうか。特に新しいことを始める際には、この視点が必要です。「チャレンジすることで、どんなチャンスが待っているのか?」と考えることで、今まで見えていなかったモノが見えてくるようになるでしょう。

リスクを天秤にかけるのは、チャンスをチャンスと捉えられるようになってからでも遅くはありません。

【結論】
「リスクの後ろに隠れているチャンスを見逃すな」

Next: 次の名言はこちらです。「成果をあげる者は意図的に意見の不一致をつくり――

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