2. “自分”という殻を乗り越えるには
では、次の名言はこちらです。
「成果をあげる者は意図的に意見の不一致をつくりあげる。そうすることによって、もっともらしいが間違っている意見や不完全な意見によってだまされる
ことを防ぐ」
出典:『創造する経営者』 (著:P・F・ドラッカー/刊:ダイヤモンド社)
「反対者がいないことが、良いこととは限らない」
人は、意識している・いないに関わらず、生きていく上で、常に自らの行動を選択し決定を下しています。あなたの人生は、「あなたのこれまでの意思決定の結果によってできている」といっても過言ではありません。
会社で仕事をする際も、個人はもとより、組織全体としても、会社の方向性やプロジェクトの内容、役割分担など、ありとあらゆることに対して意思決定が行われています。ただ、組織の意思決定が行われる時は、おそらく自分の意思が通らないことのほうが多いでしょう。
人は、他人から反対されたり、自分の意見が受け入れられなかったりすることを恐れます。ところが、ドラッカー氏は「デキる人は、意図的に反対者をつくり出す」といいます。
これは一体、どういうことなのでしょうか。
意見の不一致をつくる「3つの効果」
ドラッカー氏は「1つの案があるだけで、それにイエスかノーかと答えたところで、判断したことにはならない」と述べています。1つの意見しかなかった場合、それがいいかどうかの判断は、極めて難しいのが実情です。
もともと、世の中に唯一無二の答えなど、ほとんどありません。その時は「これが正しい」と思われる選択肢を選択したとしても、後に市場の変化によってマイナスに転じてしまったりとか、逆に答えが1つではなく何通りもある、といった場合もよくあります。
そんな中でも、少しでもよりよい選択肢を選択したいと思ったなら比較をするしかありません。
人は、比較対象を持つことによって、初めて「こっちのほうがいい」と判断が可能になります。いくつかの案を比較し検討することで、ようやく決定を行える状態になるわけです。
ドラッカー氏は、意見の不一致をつくり出す理由は3つあるといっています。それが、
1. 自分の都合を優先したい人々からの影響を小さくするため
2. 選択肢を増やすため
3. 想像力を刺激するため
この3つです。
元来、人間は感情の生き物です。あちこちから意見が上がり、自分が決定権者だった場合は、どうしても自分と仲のよい人の意見を採用したくなります。しかし、組織の決定を行う時には、極力、個人的な感情を挟まないようにしなければなりません。これが(1)の意味です。
(2)は、先ほども述べたように、比較をするためです。
(3)は、自分とは違う意見に耳を傾けることで、自分が気づいていないことにも気づけるかもしれない、ということです。ドラッカー氏も「意見が違う人は、自分とは違う現実を見て、違う問題に気づいていると考えるべきだ」と述べています。