トランプ感染で米国内の分断がさらに進んでいる。バイデン陣営だけでなく支持者からも「陽性はフェイク」との見方が出ており、投票日が近づくにつれて内戦に近い状況になるとの予測も出た。現在のアメリカの状況について解説したい。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2020年10月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
手の込んだ「コロナ克服」の演出
トランプに新型コロナウイルスの感染がきっかけとなり、アメリカの分断はさらに激しくなっている。今回はその状況について解説したい。
10月6日、容体の悪化が一時は懸念されたものの、トランプ大統領は3日間の入院を打ち切り、退院した。退院はテレビのゴールデンアワーに生中継が間に合うように午後6時半に計画され、入院先のメリーランド州にある米軍の「ウォルター・リード医療センター」から大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」でホワイトハウスに到着し、その後、ホワイトハウスのバルコニーに駆け上がり、マスクを外してスピーチするという手の込んだ演出であった。
一方、そうした状況にありながらも、ホワイトハウスでクラスターが発生し、すでに大統領を含め16人の感染が明らかになっている。またこれとは別に、米軍のトップである国防総省統合参謀本部の軍幹部や、沿岸警備隊の幹部の感染も見つかった。
ホワイトハウスのスタッフや関係者、そして米軍の高官の間ではさらに感染の拡大が懸念されており、その結果、ホワイトハウスや軍の一部が機能できなくなる可能性も指摘されるようになっている。
懸念されるトランプの病状
そうした状況で、やはりもっとも懸念されるのはトランプの病状だ。トランプの症状は一時は悪化し、血中酸素濃度が93%まで低下し、息苦しさと強い倦怠感を感じるようになっていた。そのため、一時的に酸素吸入を受けた。
トランプには、通常はICUに入院している重症患者にしか投与されない「レムデシビル」と、強い副作用のあるステロイド剤の「デキサメタゾン」が投与された。特に「デキサメタゾン」は通常は重症患者のみに投与される医薬品である。「米国感染症学会(IDSA)」によると、「デキサメタゾン」は酸素吸入が必要になっている重症の新型ウイルス感染症患者に効果がある一方、自己免疫反応が抑制されるため、軽症者に投与された場合は、むしろ害になる恐れがあるとしている。
さらに「国際骨髄腫財団」によると、副作用として視界不良や不整脈などの身体症状のほか、躁状態や人格変化、また思考困難などの精神症状が出る恐れがあるとしている。
事実トランプは、退院してからわずか1時間程度の間にツイッターで30を越える投稿を連続的に行った。どの投稿もたいした内容ではないものの、トランプが明らかに躁状態でハイになっていることを示唆しているのではないかとして注目されている。
以下がそうしたツイッターの投稿の一部だ。
・「私はトランプに投票する。私の父は労働組合に入っているが、彼の確定拠出年金はトランプ大統領の下3倍にもなった」米国人有権者より ありがとう。株式はさらに最高になると覚えててくれ。来年は最高の年となる。投票せよ、投票せよ、投票せよ!!!!」
・「史上最高の増税がほしいなら、そして経済を停止し、雇用を減らしたいなら、民主党に投票せよ!」
・「バージニア州の有権者の皆さん!あなたの知事は銃保持権利を抹消したい。私は彼を制止した。私はあなたとあなたの銃保持権利の間で戦っている唯一の存在だ。バージニアで頑張り、その戦いをしている。あなたの好きな大統領に投票するか、低い税金や銃保持権利にグッドバイのどちらかだ!」
・「高株式を求めるなら、投票せよ!」
・「強い軍隊を求めるなら、投票せよ!」
・「法と秩序を求めるなら、投票せよ!」
・「宗教の自由を求めるなら、投票せよ!
・「最高の減税そして更にそれが行われるのを求めるなら、投票せよ!」
こうした投稿が30以上も続くのである。やはりこれは、「デキサメタゾン」の副作用である躁状態にトランプはなっているのではないかと指摘されてもしかたがない。
しかし、回復を力強く演出して見せたトランプだが、これから病状が急変する可能性もあり、これから1週間程度は予断の許さない状況が続く。