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安倍前首相、物価2%「事実上到達」発言でわかった日銀緩和の的外れ=高梨彰

安倍前首相は物価2%目標について「完全雇用に近い状況を作った。事実上政策ターゲットに到達したと考えていい」と発言。突っ込みどころはありますが、物価が上がらなくても雇用データが改善したのも事実です。物価と雇用の関係がないとすれば、金融緩和の意味を考え直す必要があります。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)

※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年11月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

巣ごもり消費は好調

中国では11月11日は「独身の日」、通販各社は大規模なセールを行います。ネット大手アリババの取引額は7兆9,000億円だったとか。日本の2倍超のGDP規模を誇るようになったといっても、この額は大きいです。巣ごもり消費の強さを印象付けます。

巣ごもりといえば、新型コロナウイルス感染が再び世界で拡大しています。アメリカではNY州が再び飲食店等の活動を制限するそうです。欧州ではすでに制限が始まっています。

日本でも感染者数が増えているとのこと。ワクチン開発が進んでいるとはいえ、巣ごもり消費への関心は今冬も続きます。

言い換えれば、再び市場が感染拡大への懸念を示したとき、状況はかなり深刻だとも解釈可能です。そんなことは望んじゃいませんが、「病床が足りない」が株等リスク資産売りのサインでしょうか。

安倍首相、物価2%目標「事実上到達」

さて、安倍前首相が物価上昇率2%という目標に関連して、「完全雇用に近い状況を作った。事実上政策ターゲットに到達したと考えていい」と発言しています。

朝日新聞は早速この発言に噛みついています。「目標の2%に達成していないのに、事実上到達とは何事か」といった論調です。

安倍さんの発言は確かに突っ込みどころ満載です。しかし、物価が上がらなくても雇用データが改善したのも事実。これは米国なども同様です。

物価と雇用は金融政策で常に出て来る目標です。「物価が上がるとき、景気は拡大し雇用も上昇。景気が過熱すれば物価が上がり過ぎるので、そのときは物価上昇を抑える」、これが従来の基本的な考え方でした。

しかし、物価上昇を伴わない雇用改善をみました。だからこそ、安倍さんは「雇用改善したんだから良いじゃん」となります。

「雇用改善したんだから良いじゃん」日銀も本心は同じ

でも、中央銀行、日銀が同じことを言ってしまえば、「説明責任」に反してしまいます。「2%の目標のために頑張る」と掲げているのですから。

実際には、黒田日銀総裁はこの辺の事情について、お茶を濁した物言いを繰り返しています。本音は安倍さんと同じでしょうけど、同じことを言ってしまえば日銀の権威、日銀への信認に傷が付いてしまいます。

Next: 物価が下がったら雇用は悪化するのか?

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